離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました

14、受け入れられない

 アリシアは自室に戻り、ソファに腰を下ろすと途端に涙があふれた。
 エレナはとなりに座って、アリシアの背中を撫でる。

「旦那様は、もしや……」
「まだ、はっきりとわかりませんわ」
「でも……あの、ハンカチ……」
「セインが話を聞いています。報告を待ちましょう」
「……ええ。そう、ね」

 アリシアはそれっきり黙り込んだ。
 エレナもアリシアの肩を抱いたままそばにいる。
 ふたりとも無言のまま、しばらく経つと、部屋の扉がノックされた。
 エレナが扉を開けるとセインが立っていた。

「どうだったの?」
「状況は芳しくない。崖崩れがあったのは少し前のことだ。救助された者はみな重傷で動けない。行方不明の者に関しては、天候の影響で捜索が中止になったようだ」
「そんなっ……!」
「俺は現地へ向かって状況の確認をする」
「ええ、そうね」

 セインが出ていく寸前に、アリシアが立ち上がって走り寄った。

「私も行くわ」
「今は天候がよくありません。二次災害が起こる可能性があります。屋敷で待っていてください」

 セインにきっぱりと言われ、アリシアは静かに頷いた。

「お前は奥様から片時も離れるな」
「ええ、わかっているわ」

 セインの言葉にエレナは力強く頷いた。

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