離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました

16、侯爵領の窮地

 町の中央広場にある掲示板に、新たな貼り紙が打ちつけられた。
 朝も早い時間だったが、貼り出されたその紙はすぐに人目を引いた。
 貼り紙にはフィリクス侯爵の死去に伴い、領地の管理を暫定的にグレゴリー男爵が行うと記されていた。

「侯爵様は、本当に……亡くなられたのか?」

 次々と人々が広場へ集まって、ざわめきが広がる。
 目の前に突きつけられた現実をどう受け止めてよいかわからないという空気だ。
 しかし、それ以上に人々を震撼させたのは、貼り紙に記された告知内容だった。

〇税を現行の一割五分より四割五分に引き上げる。
〇中央通り南区画の再整備を実施。該当地域の住民は10日以内に退去すること。
〇治安維持のため、違反者は処罰の対象とする。

 貼り紙を見た誰もが言葉を失ったが、しばらくすると、どこからか怒りの声が上がった。

「は!? 税金四割五分だって?」
「半分も持っていかれたら食っていけねえよ!」
「10日以内に立ち退きって、冗談じゃないよ!」
「ふざけんなーっ!!」

 広場はあっという間に抗議の声で満ちていった。

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