離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました

20、逆転のフィナーレ

 大聖堂の扉がゆっくり開き、差し込んだ光の中に一組の男女の姿が現れる。
 場の空気が一瞬止まり、誰もが息を呑んだ。
 そして次の瞬間、堂内にざわめきが広がった。

「あれは、まさか……!」
「レオフォード侯爵様だ!」
「生きていらしたのか!」

 騒然とする中、ふたりと同時に入場した王宮直轄法務機関の役人が声を張り上げた。

「レオフォード侯爵の存命により、この婚姻式は無効となる」

 宣告が響きわたる。
 その言葉にマンブル伯爵が抗議の声を上げる。

「い、今さら生きていたと言われても、納得できるか! 死亡証明もあるのだぞ!」
「この死亡証明は偽物と判明した」

 役人が紙を掲げて高らかに告げる。

「そ、そんなバカな……どういうことなのだ? グレゴリー殿」

 伯爵が近くにいるグレゴリーに顔を向ける。グレゴリーは歯噛みしながら役人ではなくフィリクスを睨みつけている。

「……なぜ、生きている……?」

 ぼそりと呟いたその言葉は、役人の言葉でかき消される。

「グレゴリー男爵、この偽の死亡証明はあなたが指示したものだ」

 堂内の人々の視線が一気にグレゴリーに集まった。

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