離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました

22、エピローグ

 アリシアとフィリクスは盛大な結婚式を挙げることはなかった。
 結婚式について話し合った結果、ふたりは領地の教会でひそかにふたりだけの挙式をおこない、そのあとは領民たちへ披露するという形を取った。

 侯爵家ほどの家柄は、貴族を多く招いて王都の大聖堂で披露宴をすることが通例だが、アリシアはそれをためらった。
 両親が亡くなっていること、叔父が罪を犯して投獄されていること、そしてあまり目立ちたくないという考えのためだ。
 フィリクスも両親がおらず、目立つことを嫌うので、ふたりの意見はすぐに一致し、静かに過ごすことにしたのだった。 

 領民たちへの披露は、心から楽しめるものにした。
 格式や形式に縛られず、祭りのような賑やかさで祝福を受ける形だった。
 広場には露店が並び、酒や果実水で乾杯し、それぞれが歌を歌ったりダンスをしたりと盛り上がった。

 アリシアは豪華なドレスではなく、刺繍のあしらわれた白いワンピース姿で、髪には小さな花飾りをするというシンプルな格好だった。
 それでも十分に花嫁として輝いており、その姿に誰もが目を奪われた。
 町の女性たちが次々と話しかけてきて、アリシアは彼女たちとの談笑を楽しんだ。

 披露宴は夜まで続き、町は暖かいランタンの光に包まれた。
 笑顔と祝福に満ちたその日は、ふたりの胸に静かに刻まれ、その先もずっと灯り続けた。

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