離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
4、妻の事情を知った日
実はフィリクスはアリシアが町に出かけていることが以前から気になっていた。
帰還後に忙しくする中で、アリシアとどう接したらいいのかわからず避けていたが、ある日彼女が町へ出かけていくところを目撃する。
侍従のセインに訊ねると彼は言った。
「奥様は結婚後ずっと町で働いておいでです」
「それは本当か?」
「はい。旦那様が遠征へ行かれてからずっとです。最近は別の商売が軌道に乗ってきたようで勤務日数は週1か2くらいですが」
「貴族なのに町で働くなど……」
「奥様が嫁がれたときの状況を鑑みれば致し方ないかと」
「俺のせいか」
フィリクスは頭を抱えた。
アリシアが嫁いできたときこの家の財政難は著しく悪化していた。
使用人を減らさなければならなかったが、それでもアリシアを不自由にさせてはならないと思い、そのために高額報酬の得られる戦場へ赴いたというのに、彼女は働いていたのだ。
「旦那様がお気になさることはないかと。ここ1年は奥様ご自身の貯蓄をされているようですので」
「どういうことだ?」
「それは、私の口からはなんとも」
セインが意味ありげに口をつぐむので、フィリクスはハッとした。
離婚資金を貯めているのだろう。
彼女は離婚しても実家には戻れないから、ひとりで生きるための金が必要なのだ。
帰還後に忙しくする中で、アリシアとどう接したらいいのかわからず避けていたが、ある日彼女が町へ出かけていくところを目撃する。
侍従のセインに訊ねると彼は言った。
「奥様は結婚後ずっと町で働いておいでです」
「それは本当か?」
「はい。旦那様が遠征へ行かれてからずっとです。最近は別の商売が軌道に乗ってきたようで勤務日数は週1か2くらいですが」
「貴族なのに町で働くなど……」
「奥様が嫁がれたときの状況を鑑みれば致し方ないかと」
「俺のせいか」
フィリクスは頭を抱えた。
アリシアが嫁いできたときこの家の財政難は著しく悪化していた。
使用人を減らさなければならなかったが、それでもアリシアを不自由にさせてはならないと思い、そのために高額報酬の得られる戦場へ赴いたというのに、彼女は働いていたのだ。
「旦那様がお気になさることはないかと。ここ1年は奥様ご自身の貯蓄をされているようですので」
「どういうことだ?」
「それは、私の口からはなんとも」
セインが意味ありげに口をつぐむので、フィリクスはハッとした。
離婚資金を貯めているのだろう。
彼女は離婚しても実家には戻れないから、ひとりで生きるための金が必要なのだ。