離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました

1、離婚を決めたわけ

 アリシアがこのレオフォード侯爵家に嫁いだのは14歳の頃のこと。

 結婚とは何たるか、あまりよくわかっていなかった。
 知識としてあったのは家門のために女は道具として嫁ぐこと、そして嫁ぎ先の跡継ぎを産むこと。それだけだ。

 ところが、夫であるフィリクスはアリシアを娶ってからすぐに異国の地の遠征に駆り出され、2年も帰ってこなかった。
 幾度か手紙を出したが、返事もなかった。

 留守を任されたアリシアは侯爵家のためにできることをしたいと思ったが、侍従に執務について学びたいと申し出たら反対された。

「旦那様から一切の執務を奥様にさせてはならないと命じられていますから」

 アリシアは複雑な心境だった。
 まだ子供だから任せてもらえないのか、あるいは経済状況を把握されたくないのか。
 いずれにしても嫁いだというのにまるで他人のように扱われていた。

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