離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました

6、叔父の来訪

 ある日、叔父からまた手紙が届いた。今回はこれまでのような金銭の要求ではなく、侯爵家を訪れる旨が書かれていた。

「どうしよう。もう放置できないわ」

 フィリクスに知られないようにしたかったのに、これ以上は無理そうだ。
 困惑していると、エレナが紅茶を淹れながら言った。

「旦那様にご相談なさってはいかがですか?」
「気分を悪くされないかしら」
「どうせ1年後には離婚するんですから、気にされなくても大丈夫です」

 エレナに満面の笑みでそう言われて、アリシアはすっと胸が軽くなった。

(そうだわ。何を考えすぎているのかしら。どうせ嫌われているのだから、心証が悪くなっても問題ないわよ。むしろ離婚を進めてくださるかもしれないわ)

 アリシアはさっそくフィリクスに叔父のことを相談するため、彼の執務室を訪れた。
 叔父の手紙に目を通したフィリクスは冷静に言った。

「わかった。対応しよう」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 アリシアが丁寧に頭を下げると、フィリクスから意外な反応があった。

「謝ることはない。君の親戚が訊ねてくるのだ。手厚くもてなすことにしよう」
「……はい?」

 あまりに予想外の返答をされて、アリシアは呆気にとられてしまった。

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