用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~

第六章

*王太子サイド

「なに? 手紙の受け取りを断られただと?」
 戻った使者から聞かされたのは、ダミアンの期待を裏切るものだった。
「エレインという者は王宮にはいないから受け取れない、と……」
「ちっ……小賢しい」
(エレインを匿っているのは国王か? 確か王太子は今地方に視察に出ているはずだから、残るは第三王子か……)
 ダミアンは、ふと記憶に引っかかりを覚える。
(確か、俺の誕生パーティーにカムリセラ国の王族が来ていたな……。あの、黒髪で長身の目立つ……)
 ダミアンと同じか、それ以上に上背の在りそうな、会場でもひと際目を惹く男の姿を思い出した。
(あれは確か、王太子の代理で来たと言っていた第三王子。エレインが消えたのもあの日だ!)
 エレインを攫った犯人が分かり、ダミアンはぎりぎりと奥歯を噛みしめる。
 第三王子は一体どうしてエレインを自国に連れ帰ったのかと疑問が浮かぶも、今はそれどころではない。
 いよいよ枯れてしまったハーブ園と、大きな赤字を出してしまった事業の収拾に追われていた。
 最後の砦だった「若返りの水」も、国から規制がかかったとかでカムリセラ国に売れなくなってしまい、倉庫にはまだ大量の在庫が眠っている。
 このまま「赤字で終わりました」と報告するだけでは、王太子としての評判も地に落ちて、反王太子派の輩に付け入る隙を与えてしまうだろう。
 それだけはなんとしても避けたいダミアンは、なにがなんでもエレインを連れ戻し、ハーブ事業の立て直しを図らなければならなかった。
「手紙が駄目なら……強硬手段に出るしかない、か……」
 戻ってきた手紙は、ダミアンの手によってぐしゃりと握りつぶされた。

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