転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~
第五章 幸せを運ぶ天使の羽
クロウにアップルパイをもらってから三日が経った。
アウルはあれ以来、とある衝動に駆られてしまっている。
(もっと甘い物が食べたい!)
クロウからもらったアップルパイはとてつもなく美味だった。
ザクザクとした香ばしいパイ生地に甘酸っぱいリンゴのフィリング。
それが熱々の焼き立てで食べられて、「こんなスイーツをもっとたくさん食べたい!」とすっかり〝甘味欲〟を刺激されてしまったのだ。
アウルは白鳥翼として生きていた前世、甘い物に目がなかった。
仕事の合間には一口チョコレートを摘まむのが欠かせず、頑張った日のご褒美には必ずコンビニスイーツを買い、休日には簡単なものではあるがお菓子作りなんかもしていた。
不幸な目にばかり遭う苦い人生だったから、甘い物を食べて少しでも幸せを感じようとしていたのかもしれない。
そんな甘い物好きの甘味欲が前世から見事に受け継がれているようで、アウルになった今でも甘い物が大好きである。
ただ、この世界は前世と比べてあまり食文化が発展していない。
当然スイーツの種類も少なく、質もよいものだとは言えなかった。
白鳥翼は美食の大国と言われている日本に住んでいたので、尚更この世界の食文化の遅れを実感してしまう。
しかしそんな中でも、クロウにもらったアップルパイは感動の域に達する美味しさをしていた。
この屋敷に来て初めて食べたデザートの焼きリンゴも、相当な美味しさをしていたけれど、アップルパイはそれを超える上質さだった。
単にリンゴスイーツの中で、焼きリンゴよりアップルパイの方が好みだったからというのもあるが。
ともあれあんな上質なスイーツを食べさせられてしまったら、この世界に来てから我慢していた甘味欲が暴れ出すに決まっている。
(甘い物食べたいよー! 果物系のスイーツもいいけど、やっぱり一番食べたいのは〝ホイップクリーム〟なんだよー!)