売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜
二章 アデラールside
「──待ってくれ!」
アデラールは扉からすごい勢いで出て行ってしまった彼女を求めるように、手を伸ばした。
ベッドには見覚えのある蝶が刺繍されたハンカチがあった。
(やっぱり彼女はあの時の……! 間違いない。彼女こそ、僕がずっと探していた女性だ)
本当はすぐに追いかけたい。彼女にすべてを説明して引き留めたいが、なんとか理性で抑え込む。
ベッドの足にに繋がれて身動きが取れなくなっているラディング侯爵に目を向ける。
(ラディング侯爵……やっと捕えられたか)
彼の悪行の数々には王家も悩まされていた。
裏で派手に動いているはずなのに一向に捕らえられない。
内部にも内通者がいるのではないかと王家は頭を抱えていた。
どうにかして炙り出さなければ被害はどんどんと拡大していくに違いない。
タチが悪いことに金も権力も持っているため、裏で彼を慕い加担する貴族は多い。
だからこそいつも煙にまかれるようにして逃げられてしまう。
中でも問題なのは行き場のない令嬢を買い取っては、無理やりそばに置くそうだ。
その中でも悪質なのはそのやり方だ。
家族に虐げられた者、居場所がない者、魔法が火、水、風、地、雷、緑、光、闇など代表的な属性を持たない令嬢を好んで引き取っている。