【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

*番外編 (皇帝陛下の)受難は続くよどこまでも

 大波乱の社交パーティが終わり、皇帝であるローランドは私室で一人ワインを傾けていた。
 今回のパーティは大収穫だ。反皇帝派の大部分を炙り出すことができ、偽物ではあるが国宝である鏡を周囲に見せつけ、貴族たちに皇族の権威を示すことができた。それもこれもガメス公爵夫妻――いや、今はまだ婚約者か――二人のお陰である。
 妹のバレンティナが王国へ嫁ぐとなった時には、どうなることかと思ったが……娘であるエスペランサが公爵家に来てから、帝国は良い方向に進んでいた。
 王国での彼女の扱いを知っているのでエスペランサには申し訳ないのだが……帝国としては大いに助かったのである。

 勝利の美酒に酔っていると、扉を叩く音が聞こえる。
 入ってきたのはローランドの妻……皇后であるイザベラだった。

「少しご一緒しても? 陛下」

 ローランドは断ろうとした。何せ、このまま良い気分で休みたいと思っていたからだ。けれども、己の妻の顔を見て考えを改めた。イザベラがとても良い顔……満面の笑みでこちらを見ていたからだ。

 彼女はローランドの断り無しに部屋へと入ってから、彼の目の前の椅子に座ると執事や侍女たちに指示を出す。
 部屋にいた侍女たちは、イザベラの指示通りに軽食をテーブルへと用意してから部屋を出ていった。扉の外から聞こえる足跡が段々と小さくなる頃には、部屋に残っていたのはローランドとイザベラと、右腕の執事だけ。
 勝手知ったる執事が防音の魔道具を手早く起動すると同時に、イザベラの目がカッと見開いた。

「陛下、私の言いたいこと、お分かりですよね?」

 こてんと首を傾げる彼女に、ローランドは身を屈める。イザベラはそんな彼の様子などお構い無しに話し始めた。
 
「黙っていても、何も進みませんよ、陛下?」
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