【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ
第2話 帝国へ
謁見後に渡されたのは、水桶と粗末な食事、そして「餞別である」古びたトランクのみ。
この中には、袖や裾が汚れている平民服が一枚と、これまた古そうなドレスが一枚だけ入れられていた。私は母の形見である本を入れてトランクを閉める。
公爵家でも王城でも、私にドレスや装飾品などを与えられる事はなかった。母の形見であるドレスは全て後妻とブレンダに取られている。
私の手元に残っているのは、トランクに入れた母の本と、首元に残ったお守り代わりの首飾りだけ。幸い安物と侮られたおかげで、これは彼女の手へと渡らずに済んだもの。
その後は精神的に疲れたのだろうか、私は寝具に横たわったまま寝てしまっていたらしい。扉を叩く大きな音で目が覚めた。
飛び起きた私は、書類仕事が残っていたのかしら……と働かない頭で考えてから、寝具の横に置いてあった水で顔を洗う。そして今日が出立の日であった事を思い出した。
乱れている髪の毛を適当に撫で付けた後、テーブルの下に置いてあったトランクを手に取り、扉を開ける。するとそこには眉間に皺を寄せた男が、苛立ちを隠さない表情でこちらを見ていた。
「遅い! もう既に皆様は揃っているぞ。何をしている!」
男は舌打ちをした後、私の手を乱暴に掴み部屋から強引に引っ張り出して、顎で着いてくるよう指示を出す。
着いた場所は正門の正反対に位置する裏門。そこには公爵家の面々と元婚約者が揃って醜悪な笑みを浮かべている。
「着いたか、エスペランサ……いや、ブレンダ。もしかして、血濡れの公爵に会うのが怖くて、怯えていたか?」
「ジオ様、この図太いお姉様がそんな繊細な心を持っているはずがありませんわ」
私を蹴落とし、ジオドリック様の隣に立てた事が何より嬉しいのだろう。ブレンダはこちらを見て、ニンマリと笑った。
「最後にお姉様へと贈り物を差し上げますわね?」
無言の私に痺れを切らしたのか、彼女は呪文を唱える。昨日公爵が言っていた、制約魔法でしょう……。魔法が掛け終わると、ブレンダはニヤニヤとこちらを見てから問いかけた。
「あなたの名前は?」
「……!」
私の言葉に周囲は満面の笑みだ。魔法が成功したからだろう。下品な笑みでブレンダは笑う。
「お姉様、これは声がでなくなる魔法よ。まあお姉様にとっては、呪いかもしれないわね」
「『郷には郷に従え』という言葉があるのだ。声が出ないと殺されても、文句を言うでないぞ?」
ホイートストン公爵も私を追い出せる事が嬉しいのか、満面の笑みで話す。
「……郷には郷に従え、か。いい言葉だ。これで、我々がどれほど帝国に耐え忍んできたか、奴らにもわからせてやれるだろう」
ジオドリック様の言葉に、全員が頷いた。
この中には、袖や裾が汚れている平民服が一枚と、これまた古そうなドレスが一枚だけ入れられていた。私は母の形見である本を入れてトランクを閉める。
公爵家でも王城でも、私にドレスや装飾品などを与えられる事はなかった。母の形見であるドレスは全て後妻とブレンダに取られている。
私の手元に残っているのは、トランクに入れた母の本と、首元に残ったお守り代わりの首飾りだけ。幸い安物と侮られたおかげで、これは彼女の手へと渡らずに済んだもの。
その後は精神的に疲れたのだろうか、私は寝具に横たわったまま寝てしまっていたらしい。扉を叩く大きな音で目が覚めた。
飛び起きた私は、書類仕事が残っていたのかしら……と働かない頭で考えてから、寝具の横に置いてあった水で顔を洗う。そして今日が出立の日であった事を思い出した。
乱れている髪の毛を適当に撫で付けた後、テーブルの下に置いてあったトランクを手に取り、扉を開ける。するとそこには眉間に皺を寄せた男が、苛立ちを隠さない表情でこちらを見ていた。
「遅い! もう既に皆様は揃っているぞ。何をしている!」
男は舌打ちをした後、私の手を乱暴に掴み部屋から強引に引っ張り出して、顎で着いてくるよう指示を出す。
着いた場所は正門の正反対に位置する裏門。そこには公爵家の面々と元婚約者が揃って醜悪な笑みを浮かべている。
「着いたか、エスペランサ……いや、ブレンダ。もしかして、血濡れの公爵に会うのが怖くて、怯えていたか?」
「ジオ様、この図太いお姉様がそんな繊細な心を持っているはずがありませんわ」
私を蹴落とし、ジオドリック様の隣に立てた事が何より嬉しいのだろう。ブレンダはこちらを見て、ニンマリと笑った。
「最後にお姉様へと贈り物を差し上げますわね?」
無言の私に痺れを切らしたのか、彼女は呪文を唱える。昨日公爵が言っていた、制約魔法でしょう……。魔法が掛け終わると、ブレンダはニヤニヤとこちらを見てから問いかけた。
「あなたの名前は?」
「……!」
私の言葉に周囲は満面の笑みだ。魔法が成功したからだろう。下品な笑みでブレンダは笑う。
「お姉様、これは声がでなくなる魔法よ。まあお姉様にとっては、呪いかもしれないわね」
「『郷には郷に従え』という言葉があるのだ。声が出ないと殺されても、文句を言うでないぞ?」
ホイートストン公爵も私を追い出せる事が嬉しいのか、満面の笑みで話す。
「……郷には郷に従え、か。いい言葉だ。これで、我々がどれほど帝国に耐え忍んできたか、奴らにもわからせてやれるだろう」
ジオドリック様の言葉に、全員が頷いた。