【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ

第38話 決行

 私はディロン伯爵卿が退出した扉から出る。
 目の前には庭へと降りる階段が設置されており、私は伯爵卿の指示通りに下へと降りていく。着いた先には広場があり、奥には薔薇の迷宮と呼ばれる迷路のような庭園があるそうだ。現在は広間の光もそこまで届かないためか、目を凝らさないと見ることはできないが。

 庭の隅にはいくつかベンチが置かれていた。迷宮側のベンチは男女のカップルが静かに愛を囁き合っているように見える。しかしディロン伯爵卿の姿はない。ここからは、他の者の誘導になるのだろう。
 私は指示通り、椅子へと座る。すると突然、広間で叫び声が上がった。

 思わず立ち上がって広間のバルコニーを見上げる。その間に奥で睦み合っていた男女たちは居なくなっていた。避難したのか、逃げたのか……私には分からないけれど。

 相変わらず広間では怒声が響き渡る。どうやら声を聞いていると、鏡が給仕によって盗まれたらしい。あの鏡は偽鏡ではあるし、鏡の場所を把握できるような仕組みになっているので、すぐに捕まるだろう。
 それよりも伯爵卿とのやり取りで「私が庭を訪れたらすぐに騒ぎが起こります」と書かれていたが……どうやら偽鏡を盗むことだったようだ。確かに広間内を撹乱させるのには、一番手っ取り早い。
 広間の扉が閉められる。それだけではなく、バルコニーの窓も全てだ。これで広間にいた貴族たちは、その場に留まることとなってしまう。

 庭には私一人……。

 ――皇帝陛下の予想通りに、ことは進んでいた。
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