妹ばかり見ている婚約者はもういりません

5.パーティーの準備

「本当に何なのよもう……!」

 フェリーチェが行ってしまった後、渡り廊下に取り残された私は悔しさに一人歯噛みしていた。

 どうしてフェリーチェにラウロ様のことをとやかく言われなければならないのか。ろくに言い返せなかった自分のことも腹立たしい。

 フェリーチェの「心配だった」なんて言葉が口実に過ぎないのは、表情を見ただけでよくわかった。望み通りルドヴィク様と婚約できるのだから、私に構わないでくれたらいいのに。

「……ここにいたって仕方ないわ。そろそろ行かなきゃ」

 ずっとここにいてはラウロ様を待たせてしまう。私はもやもやする気持ちを押さえつけて、彼の教室の方へ向かった。


 教室の方まで戻ると、先ほどよりもいくらか人が少なくなっていた。私は人々の間をすり抜けるようにラウロ様を探す。するとF組の教室の前の廊下に彼の姿を見つけた。

 ラウロ様も私に気が付いたようで、こちらを振り向く。

「ジュスティーナ嬢、大丈夫だったか? 何か言われたりはしなかっただろうか」

「私は大丈夫です。ラウロ様こそ大丈夫でしたか?」

「俺のほうは問題ない」

「それならよかったですわ。行きましょう、ラウロ様」

 廊下を歩くほかの生徒たちからはやっぱりじろじろと探るような目を向けられたけれど、そんな視線を振り切るように校舎を出て馬車のところまで急いだ。


 しかし、ようやく馬車の前までついたところで、私は忘れていたことを思い出した。

「あ……っ!」

「どうした? ジュスティーナ嬢」

「すみません。私、提出し忘れたものがありました……」

「課題か何かか?」

「いえ、ダンスパーティーの出欠票です。すでに出席すると書いてカードを提出してしまったんですが、事情が変わったので取り消そうと思っていたのをすっかり忘れていて」

「ああ、なるほど……。そういえば提出日は今日までだったな」

 私が眉根を寄せて答えると、ラウロ様は難しい顔でうなずいた。

 来週は学園で、夏に行われる二回のダンスパーティーのうちの、一回目が行われる。参加は自由だけれど、当日来るかどうかを事前にカードに書いて事務所に提出しなければならないのだ。

 一応私もルドヴィク様と参加する予定だったので出席でカードを出したけれど、婚約破棄してしまったのでその予定はなくなった。

 なので欠席のカードを出し直そうと思っていたのだが、今の今まですっかり忘れていた。


「わかった。ここで待っているから今から行ってくるといい」

 ラウロ様は小さく微笑んでそう言った。私はお礼を言ってから馬車を離れる。

 事務所まで歩きかけたところで、ふと気になって足を止めた。

 そのまま振り返ってラウロ様のところまで戻る。
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