妹ばかり見ている婚約者はもういりません

9.呪いを解くには

 それから早速、呪いを解くために動き始めることになった。

 エルダさんとドナートさんは呪いのことを気にしつつも仕事に戻って行ったので、研究室でラウロ様と二人机に向かい合う。

 まずは呪いの症状について聞いた。顔の痣は普段はなんともないが、時折小さな痛みが走ることがあるらしい。

 これまでに、光魔法を使える者や、植物を操れる者など、たくさんの魔術師を呼んできたけれど、その誰にも呪いを解けなかったのだそうだ。


 呪いがかけられた時の状況についても尋ねてみた。

 生まれたばかりのラウロ様は、何人もの使用人に囲まれて面倒を見られていたが、ロジータ妃はその全員を魔法によって眠らせ、誰も見ている者がいなくなった隙に呪いをかけたのだという。

 世話係の使用人が目を覚ましたときには、すでに顔に火傷のような傷をつけられたラウロ様が、ベッドで泣き叫んでいる状況だった。

 懸命な治療により火傷の傷は回復したものの、後にははっきりと黒い蔦の文様が残されていたのだと、ラウロ様は説明してくれた。


「なんてひどい話ですの……! いくら王妃様に嫉妬していたからって、赤ん坊だったラウロ様を巻き込むなんてあんまりですわ!」

「ありがとう、ジュスティーナ嬢。理不尽な目に遭ったと俺も思うよ。けれどロジータ妃も、家族から引き離されて半ば強引に王宮に連れて来られたうえ、肝心の国王陛下からも最初の数ヶ月を除いては冷たく扱われていたらしいんだ。憤りが募って、扱いのまるで違う正妃様に怒りが向いたのも無理はないのかもしれない」

 ラウロ様はどこか悲しそうな顔で言った。その声は、まるでロジータ妃に同情しているみたいだった。

 罪のないラウロ様に呪いをかけるような人を哀れんであげる必要なんてないのにと、私のほうが悔しくなってしまう。


「……ロジータ妃のことで、何か呪いを解くヒントになりそうなことはありますか?」

「ロジータ妃についての情報はほとんど残っていないんだ。だが、彼女の出身地であるラルミアには、強い闇魔法の力を持つ者が多く生まれると聞いた。人口自体少ない町だから、多くと言ってもそれほどの人数ではないようだが」

「そうなのですか? 知りませんでしたわ」


 闇魔法を使える者は、このフォリア王国では滅多に生まれてこない。

 ごく弱い闇魔法を使える者ですら数百人に一人程度しかおらず、強い魔法が使える者となると、一般人には一生に一度お目にかかれるかかかれないかの存在だ。

 だからこそ、闇魔法を使えたロジータ妃が妃として迎え入れられたのだろう。

 そんな貴重な闇魔法を使える人物が多く生まれる町だというのなら、ラルミアはきっと特別な土地なのだ。

 書庫にラルミア関係の本がたくさんあったのは、その特別な地を調べるためだったのかと思い至る。
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