離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました
8.あなたがそばにいてくれるから

「おはようございます、本日708号室を担当する須藤です」
「おー。今日はまたみーちゃんか。⋯⋯ん?」
「笹井さん、猫みたいなその呼び方やめてください。須藤です」
「わはは、いいだろ可愛くて⋯⋯ん? 須藤?」

笹井だけでなく、病室内の患者から視線が集まる。

「じ、実は結婚しておりまして。先日から夫の姓を名乗ることにしたんです。はい、まずは体温から測りますね」

気恥ずかしくてそそくさと体温計を配ると、笹井は豪快に笑った。

「噂には聞いてたが、本当にみーちゃんは須藤先生と結婚してたんか! そりゃめでたい。おめでとう」
「ありがとうございます。といっても、もう入籍して結構経つんですけどね」

嵐のような女性〝ケイト・デイビス〟の襲来以降、未依と律の結婚は病棟だけでなく病院全体に広まった。

未依は『妻があれだけ平凡なら、自分にもチャンスがあるかもしれない』と考える女性が多く出てくるのではと恐れていたのだが、そんな心配は無用だった。

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