離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました
1.愛の伴わない同情婚
未依が勤める総合医療センターは、この地域の急性期病院であり、二次救急医療機関としての役割を担っている。他の医療機関や施設と連携を取りながら多くの要請を受け入れており、ドクターヘリの基地病院でもある。
高度な医療機器を備え、多くの診療科を有しているこの病院で、未依は病棟の看護師として働いていた。
入院患者は小児科病棟、整形外科病棟、緩和ケア病棟、リハビリテーション病棟と別れているが、未依が担当している七階フロアは消化器科、呼吸器科、循環器科、脳神経科など、幅広い疾患の患者を受け入れている。
肩よりも少し長い焦げ茶色の髪はひとつでまとめ、シースルーバングにしている前髪は軽く斜めに流し、顔まわりのおくれ毛を巻いて動きを出すのがいつものスタイル。
腰が隠れる長さの上衣にパンツスタイルのナース服は全身白で統一され、襟と袖とポケットに紺のパイピングがあるのが可愛くてお気に入りだ。
「おはようございます、本日七〇八号室を担当する神崎です」
朝の九時半。バイタルチェックのため、ガラガラとナースワゴンを押して担当する病室へとやって来た。
「おー。今日はみーちゃんか」
「笹井さん、猫みたいな呼び方やめてください。神崎です」