45歳、妊娠しました
第20話 知られてしまった日
昼休みの教室。
結衣は友人たちとお弁当を広げていた。
何気ない会話の中で、突然ひとりのクラスメイトが口にした。
「ねえ結衣、ほんと? お母さん、赤ちゃんできたって」
箸が止まる。
耳の奥で血の音が響く。
「……え?」
と聞き返した声は震えていた。
「ほら、うちのママが病院で聞いたって。すごいよね、45歳で!」
無邪気な笑顔と一緒に放たれた言葉は、結衣の胸に鋭く突き刺さった。
友人たちがざわめく。
「すごい! 若いママだって思ってたけど……」
「でも、弟か妹できるなんて羨ましいな」
結衣は笑おうとした。
「……まあ、そうみたい」
けれど、声はかすれていた。
放課後、帰り道で仲のいい友人・彩香が心配そうに並んだ。
「結衣、大丈夫? 嫌だった?」
「……別に」
言いながらも、喉の奥が苦しくなる。
「正直、ちょっと恥ずかしいよ。だって……私、もうすぐ二十歳なのに」
吐き出すように言ったその瞬間、涙がこぼれた。
彩香は黙ってハンカチを差し出した。
帰宅すると、美香がキッチンで夕食の準備をしていた。
「おかえり。今日はどうだった?」
「……普通」
背を向けたまま答えるのが精一杯だった。
部屋に戻り、ベッドに顔を埋める。
頭の中でクラスメイトの笑い声がこだまし、母の大きくなり始めたお腹の姿と重なった。
──私、本当に“お姉ちゃん”になれるの?
結衣の胸に新しい葛藤が渦巻いていた。
結衣は友人たちとお弁当を広げていた。
何気ない会話の中で、突然ひとりのクラスメイトが口にした。
「ねえ結衣、ほんと? お母さん、赤ちゃんできたって」
箸が止まる。
耳の奥で血の音が響く。
「……え?」
と聞き返した声は震えていた。
「ほら、うちのママが病院で聞いたって。すごいよね、45歳で!」
無邪気な笑顔と一緒に放たれた言葉は、結衣の胸に鋭く突き刺さった。
友人たちがざわめく。
「すごい! 若いママだって思ってたけど……」
「でも、弟か妹できるなんて羨ましいな」
結衣は笑おうとした。
「……まあ、そうみたい」
けれど、声はかすれていた。
放課後、帰り道で仲のいい友人・彩香が心配そうに並んだ。
「結衣、大丈夫? 嫌だった?」
「……別に」
言いながらも、喉の奥が苦しくなる。
「正直、ちょっと恥ずかしいよ。だって……私、もうすぐ二十歳なのに」
吐き出すように言ったその瞬間、涙がこぼれた。
彩香は黙ってハンカチを差し出した。
帰宅すると、美香がキッチンで夕食の準備をしていた。
「おかえり。今日はどうだった?」
「……普通」
背を向けたまま答えるのが精一杯だった。
部屋に戻り、ベッドに顔を埋める。
頭の中でクラスメイトの笑い声がこだまし、母の大きくなり始めたお腹の姿と重なった。
──私、本当に“お姉ちゃん”になれるの?
結衣の胸に新しい葛藤が渦巻いていた。