45歳、妊娠しました
第34話 迫りくる出産の気配
入院生活にも少し慣れてきたある夜、美香はこれまでにない張りを感じて目を覚ました。お腹に手を当てると、小さな命は力強く動いている。しかし同時に、息を呑むような不安が込み上げてきた。
ナースコールを押すと、看護師がすぐに駆けつけ、モニターで赤ちゃんの心拍を確認する。
「お母さん、心配しなくて大丈夫ですよ。ただ、少し様子を見ましょう」
優しい声に一度は安堵したが、やはり高齢での妊娠。万一を考えれば、心は落ち着かなかった。
翌朝、主治医からはより詳しい説明があった。
「母体の血圧も上がりやすくなっています。自然分娩を目指したいところですが……帝王切開の可能性も考えておいてください」
その言葉は、美香の胸に重く響いた。
面会に来た健一と結衣に、美香は正直に伝えた。
「先生から、帝王切開になるかもしれないって……」
結衣の顔がこわばる。
「そんな……お母さん、大丈夫なの?」
「大丈夫。どんな方法でも、赤ちゃんが元気に生まれてくれればいいから」
健一は妻の手をしっかりと握った。
「怖いのは俺たちも同じだ。でも、美香と赤ん坊を守るためなら、最善を選ぶ。それだけだ」
病室の窓から見える冬空はどこか張りつめた色をしていた。
新しい命がこの世に現れる瞬間が、確実に近づいている──その緊張を、三人は静かに共有していた。
ナースコールを押すと、看護師がすぐに駆けつけ、モニターで赤ちゃんの心拍を確認する。
「お母さん、心配しなくて大丈夫ですよ。ただ、少し様子を見ましょう」
優しい声に一度は安堵したが、やはり高齢での妊娠。万一を考えれば、心は落ち着かなかった。
翌朝、主治医からはより詳しい説明があった。
「母体の血圧も上がりやすくなっています。自然分娩を目指したいところですが……帝王切開の可能性も考えておいてください」
その言葉は、美香の胸に重く響いた。
面会に来た健一と結衣に、美香は正直に伝えた。
「先生から、帝王切開になるかもしれないって……」
結衣の顔がこわばる。
「そんな……お母さん、大丈夫なの?」
「大丈夫。どんな方法でも、赤ちゃんが元気に生まれてくれればいいから」
健一は妻の手をしっかりと握った。
「怖いのは俺たちも同じだ。でも、美香と赤ん坊を守るためなら、最善を選ぶ。それだけだ」
病室の窓から見える冬空はどこか張りつめた色をしていた。
新しい命がこの世に現れる瞬間が、確実に近づいている──その緊張を、三人は静かに共有していた。