45歳、妊娠しました
第37話 手術室の灯
強い光が照らす手術室。美香は冷たい台に横たわり、心臓の鼓動が耳に響くほど大きく感じられた。
麻酔が効き始め、下半身の感覚が徐々に遠のいていく。
(大丈夫、大丈夫……赤ちゃんに会えるんだから……)
自分に言い聞かせるように目を閉じた。
その頃、手術室の前の長い廊下では、健一と結衣が並んで座っていた。
二人とも何も口にせず、ただ手を固く握り合っている。
「……父さん」
沈黙を破るように結衣が声を出した。
「もし、お母さんに何かあったら……」
その言葉を途中で健一は遮った。
「ない。絶対に大丈夫だ。お前の母さんは強い人だ。俺も信じる」
結衣は唇を噛みしめた。母の入院生活で初めて父がこんなに強く見えた。
彼女もまた、不安でいっぱいだったが──父の言葉を信じようと思った。
手術室のランプが赤く点灯し、静まり返った廊下に小さな機械音が漏れ聞こえる。
時計の針は遅々として進まず、時間が凍りついたかのようだった。
やがて、結衣はそっと父に寄りかかった。
「お母さん、頑張ってるよね……」
「ああ。きっと……新しい家族を連れて帰ってきてくれる」
二人の手の温もりが、互いを支え合う唯一の力だった。
一方、手術室の中で、美香は意識の端で医師と看護師の声を聞いていた。
「心拍、安定しています」
「もうすぐです。準備を」
胸が締めつけられるような緊張の中、
──その瞬間を迎えるために、彼女は全身で祈っていた。
麻酔が効き始め、下半身の感覚が徐々に遠のいていく。
(大丈夫、大丈夫……赤ちゃんに会えるんだから……)
自分に言い聞かせるように目を閉じた。
その頃、手術室の前の長い廊下では、健一と結衣が並んで座っていた。
二人とも何も口にせず、ただ手を固く握り合っている。
「……父さん」
沈黙を破るように結衣が声を出した。
「もし、お母さんに何かあったら……」
その言葉を途中で健一は遮った。
「ない。絶対に大丈夫だ。お前の母さんは強い人だ。俺も信じる」
結衣は唇を噛みしめた。母の入院生活で初めて父がこんなに強く見えた。
彼女もまた、不安でいっぱいだったが──父の言葉を信じようと思った。
手術室のランプが赤く点灯し、静まり返った廊下に小さな機械音が漏れ聞こえる。
時計の針は遅々として進まず、時間が凍りついたかのようだった。
やがて、結衣はそっと父に寄りかかった。
「お母さん、頑張ってるよね……」
「ああ。きっと……新しい家族を連れて帰ってきてくれる」
二人の手の温もりが、互いを支え合う唯一の力だった。
一方、手術室の中で、美香は意識の端で医師と看護師の声を聞いていた。
「心拍、安定しています」
「もうすぐです。準備を」
胸が締めつけられるような緊張の中、
──その瞬間を迎えるために、彼女は全身で祈っていた。