45歳、妊娠しました
第45話 復帰の日
蓮を保育園に預けた朝。
美香は久しぶりにスーツに袖を通し、駅へ向かっていた。
19年ぶりの育児と、管理職としての責任──その両方を抱えての復帰に、胸の奥がざわつく。
オフィスに足を踏み入れると、フロアの空気が一瞬止まり、次にざわめきが広がった。
「課長、お帰りなさい!」
部下たちの声に、美香は緊張を隠しながら微笑んだ。
「ただいま。今日からまたよろしくお願いします」
自席に腰を下ろすと、積み上がった書類と、未読のメールの数に思わず息をのむ。
松井が不安げに近づいてきた。
「課長、無理なさらないでくださいね。僕たちで分担できることはやりますから」
その言葉に、美香は小さくうなずいた。
「ありがとう。でも任せきりにはしないわ。私もできる範囲で全力を尽くす」
午前中は溜まった業務の整理に追われ、あっという間に時間が過ぎていった。
午後の会議室。
「佐藤課長、次期プロジェクトについての方向性を──」と部下に問われると、美香は深呼吸をしてから答えた。
「今までのやり方を踏襲するのも一つ。でもこれからは“効率”を意識した体制に変えていきたいの。私自身も時間が限られているからこそ、チーム全体で成果を出せる仕組みを作りたい」
部下たちが真剣にメモを取り、うなずく姿を見て、美香は心の奥で小さな自信を取り戻した。
夕方。
時計を見ると、お迎えの時間が迫っている。
かつては残業して夜遅くまで働くのが当たり前だった。でも今は違う。
「今日はここまで。続きは明日整理しましょう」
そう言って会議を締めると、驚いた顔をする部下もいたが、やがて拍手が起こった。
帰りの電車。
スマホに届いた保育園からの連絡帳アプリには、こう記されていた。
《蓮くん、午前中に少し泣きましたが、お昼寝もごはんもよくできました》
その一文に、美香の胸が熱くなる。
「……大丈夫。私も、蓮も、きっとやっていける」
窓の外に流れる夕焼けが、新しい毎日を祝福してくれているように見えた。
美香は久しぶりにスーツに袖を通し、駅へ向かっていた。
19年ぶりの育児と、管理職としての責任──その両方を抱えての復帰に、胸の奥がざわつく。
オフィスに足を踏み入れると、フロアの空気が一瞬止まり、次にざわめきが広がった。
「課長、お帰りなさい!」
部下たちの声に、美香は緊張を隠しながら微笑んだ。
「ただいま。今日からまたよろしくお願いします」
自席に腰を下ろすと、積み上がった書類と、未読のメールの数に思わず息をのむ。
松井が不安げに近づいてきた。
「課長、無理なさらないでくださいね。僕たちで分担できることはやりますから」
その言葉に、美香は小さくうなずいた。
「ありがとう。でも任せきりにはしないわ。私もできる範囲で全力を尽くす」
午前中は溜まった業務の整理に追われ、あっという間に時間が過ぎていった。
午後の会議室。
「佐藤課長、次期プロジェクトについての方向性を──」と部下に問われると、美香は深呼吸をしてから答えた。
「今までのやり方を踏襲するのも一つ。でもこれからは“効率”を意識した体制に変えていきたいの。私自身も時間が限られているからこそ、チーム全体で成果を出せる仕組みを作りたい」
部下たちが真剣にメモを取り、うなずく姿を見て、美香は心の奥で小さな自信を取り戻した。
夕方。
時計を見ると、お迎えの時間が迫っている。
かつては残業して夜遅くまで働くのが当たり前だった。でも今は違う。
「今日はここまで。続きは明日整理しましょう」
そう言って会議を締めると、驚いた顔をする部下もいたが、やがて拍手が起こった。
帰りの電車。
スマホに届いた保育園からの連絡帳アプリには、こう記されていた。
《蓮くん、午前中に少し泣きましたが、お昼寝もごはんもよくできました》
その一文に、美香の胸が熱くなる。
「……大丈夫。私も、蓮も、きっとやっていける」
窓の外に流れる夕焼けが、新しい毎日を祝福してくれているように見えた。