追放された薬師ですが、冷酷侯爵に溺愛されて辺境でスローライフ始めます
第16章 直接対決
王宮。
謁見の間。
豪華なシャンデリアが、天井から吊り下げられている。
壁には、金色の装飾が施されている。
赤い絨毯が、入口から玉座まで続いている。
貴族たちが、両側に並んでいる。
豪華なドレスと礼服を着て、互いに囁き合っている。
玉座には、国王が座っていた。
前回、リディアが見た時よりも、顔色が良い。
だが、まだ痩せている。
その隣には、王太子が立っている。
そして、壇上の近くには、セレナがいた。
金髪が美しく輝き、豪華なドレスを着ている。
謁見の間の扉が、開いた。
侍従が、声を上げた。
「ヴァレンティス侯爵、カイル・ヴァレンティス様、ご入場!」
貴族たちが、扉の方を見た。
カイルが、入ってきた。
銀髪、隻眼、黒い礼服。
威厳のある、姿。
カイルは、堂々と赤い絨毯を歩いた。
そして、その後ろから——。
リディアが、入ってきた。
深い青色のドレスを着て、凛とした表情。
貴族たちが、ざわめいた。
「あれは……リディア・アーシェンフェルトでは?」
「王宮を去った、あの娘か?」
「何故、ここに?」
囁き声が、謁見の間に満ちた。
リディアは、カイルの後ろを歩いた。
胸が、激しく打っている。
だが、リディアは顔に出さなかった。
堂々と、歩く。
リディアは、壇上の近くにいるセレナを見た。
セレナは、冷たい笑みを浮かべている。
その目は、リディアを値踏みしている。
リディアは、視線を逸らさなかった。
そして、さらに前方を見た。
アルヴィンが、王太子の隣に立っている。
アルヴィンは、驚愕の表情だ。
目を見開き、リディアを見つめている。
リディアは、アルヴィンを一瞥した。
そして、無視した。
カイルは、玉座の前に立った。
リディアも、その隣に立った。
カイルは、深く頭を下げた。
「陛下、お目にかかれて光栄です」
国王は、カイルを見た。
「カイル侯爵、よく来た」
国王の声は、以前よりも力強い。
だが、まだ弱々しい。
国王は、続けた。
「辺境の報告を、聞かせてくれ」
カイルは、頷いた。
「はい、陛下」
カイルは、貴族たちを見回した。
そして、宣言した。
「我が領地の医療改革について、報告いたします」
貴族たちが、注目した。
カイルは、リディアの方を向いた。
「薬師長、リディア・アーシェンフェルトが、報告します」
貴族たちが、再びざわめいた。
「薬師長……?」
「あの婚約破棄された娘が?」
「信じられない……」
リディアは、深呼吸をした。
そして、一歩前に出た。
リディアは、国王に頭を下げた。
「陛下、お目にかかれて光栄です」
国王は、リディアを見た。
その目には、興味の色がある。
「リディア・アーシェンフェルトか」
国王の声が、穏やかだ。
「カイル侯爵の薬師長だと?」
「はい、陛下」
リディアは、顔を上げた。
「私は、ヴァレンティス侯爵領で、医療改革を行いました」
リディアの声が、謁見の間に響く。
「その成果を、報告させていただきます」
国王は、頷いた。
「聞かせてくれ」
リディアは、鞄から報告資料を取り出した。
そして、貴族たちを見回した。
セレナが、冷たく笑っている。
アルヴィンが、困惑している。
他の貴族たちは、興味津々だ。
リディアは、報告を始めた。
「まず、新薬の開発についてです」
リディアは、資料を開いた。
「私は、魔力に依存しない、化学合成型の治療薬を開発しました」
貴族たちが、ざわめいた。
「魔力に依存しない?」
「そんなことが可能なのか?」
リディアは、続けた。
「この薬は、慢性疼痛に対して、95%の効果を示しました」
リディアは、グラフを見せた。
「治療実績は、300名。全員、回復しました」
貴族たちが、驚きの声を上げた。
「300名……?」
「全員回復……?」
リディアは、自信を持って言った。
「これにより、ヴァレンティス侯爵領の医療は、大きく改善されました」
国王は、興味深そうに聞いていた。
「素晴らしい成果だ」
だが、その時——。
セレナが、立ち上がった。
「陛下、お待ちください」
セレナの声が、謁見の間に響いた。
セレナは、優雅に前に出た。
そして、リディアを見た。
「リディア、あなたの薬は危険です」
セレナの声が、謁見の間に響く。
リディアは、セレナを見た。
心臓が、激しく打っている。
だが、リディアは冷静を装った。
「危険……ですか?」
「ええ」
セレナは、貴族たちの方を向いた。
「皆様、リディアの薬は、魔力を使っていません」
セレナの声が、懸念に満ちている。
「それは、我々の薬学の基本を無視しています。根拠が、不明確です」
貴族たちが、ざわめいた。
「確かに……魔力を使わない薬など……」
「聞いたことがない……」
セレナは、リディアを見た。
「リディア、あなたの薬の根拠を、説明できますか?」
リディアは、深呼吸をした。
そして、冷静に答えた。
「はい、説明できます」
リディアは、報告資料を開いた。
「私の薬は、薬草の化学成分を抽出し、精製したものです」
リディアは、図解を見せた。
「魔力ではなく、化学反応によって、治療効果を発揮します」
貴族たちが、興味深そうに聞いている。
リディアは、続けた。
「例えば、白い根草には、鎮痛作用のある成分が含まれています。私は、その成分を抽出し、純粋な形で投与しました。その結果、魔力を使わずとも、高い効果を得られました」
リディアは、データを提示した。
「治療前と治療後の比較データです。患者の痛みのレベルが、平均90%減少しました」
貴族たちが、驚きの声を上げた。
「90%……」
「本当に、そんなことが……」
だが、一部の貴族が、批判の声を上げた。
「だが、魔力を使わぬ薬など、邪道ではないか?」
「伝統を無視している」
リディアは、その貴族を見た。
「邪道……でしょうか?」
リディアの声が、静かだが力強い。
「私は、結果を出しました。300名の患者を、救いました」
リディアは、貴族たちを見回した。
「それでも、邪道と言えますか?」
貴族たちは、黙った。
国王が、口を開いた。
「リディア、お前の薬は、本当に安全なのか?」
リディアは、国王を見た。
「はい、陛下。安全です」
リディアは、続けた。
「副作用も、最小限に抑えられています。長期使用しても、依存性はありません」
その時、セレナが、再び立ち上がった。
「リディア、あなたは依存性がないと言いましたね」
セレナの目が、鋭い。
「では、あなたの薬の成分を、ここで公開できますか?」
リディアは、頷いた。
「はい、できます」
リディアは、資料を取り出した。
「私の薬の成分は、白い根草から抽出したアルカロイド、そして——」
リディアは、詳細に説明した。
貴族たちが、真剣に聞いている。
リディアは、説明を終えた。
「以上です。全て、公開可能です」
セレナは、顔色を変えた。
だが、すぐに笑顔を取り戻した。
「そうですか。では、安全なのでしょうね」
リディアは、セレナを見た。
そして、静かに言った。
「では、セレナ様」
リディアの声が、謁見の間に響く。
「あなたの秘薬の成分を、ここで公開できますか?」
貴族たちが、息を呑んだ。
セレナは、顔色を変えた。
「私の秘薬……?」
「はい」
リディアは、セレナの目を見た。
「あなたの美容秘薬です。成分を、公開できますか?」
セレナは、しばらく黙っていた。
そして、冷たく笑った。
「それは、企業秘密です」
リディアは、頷いた。
「企業秘密……ですか」
リディアは、貴族たちを見回した。
「私は、全てを公開できます。ですが、セレナ様は、公開できないそうです」
リディアの声が、静かだが鋭い。
「どちらが、信頼できるでしょうか?」
貴族たちが、ざわめいた。
「確かに……」
「公開できないのは、怪しい……」
セレナは、顔を強張らせた。
「リディア、あなた……」
国王が、手を上げた。
「静粛に」
国王の声が、謁見の間を制する。
国王は、リディアを見た。
「リディア、興味深い報告だ」
国王は、続けた。
「後日、詳細を審議しよう」
セレナは、顔を強張らせた。
そして、国王の方へ進み出た。
「陛下、お待ちください」
セレナの声が、焦りを帯びている。
「彼女は、婚約を破棄された身です」
セレナは、リディアを指差した。
「第三王子殿下が見放した、不出来な元婚約者です」
セレナの声が、謁見の間に響く。
「そのような者の言葉を、信用できません」
貴族たちが、再びざわめいた。
「確かに……婚約破棄された身で……」
「殿下が見放した娘の言葉など……」
リディアは、唇を噛んだ。
心臓が、激しく打っている。
また、前世と同じ。
告発者が、信用されない。
リディアの手が、震えた。
その時。
重い足音が、響いた。
カイルが、立ち上がった。
謁見の間が、静まり返る。
カイルの隻眼が、貴族たちを見渡す。
冷酷な、威圧感。
貴族たちが、息を呑んだ。
カイルは、国王を見た。
「陛下」
カイルの声が、低く響く。
「彼女は、俺の領地で実績を上げた」
カイルは、リディアの方を向いた。
「三百名の患者を、救った」
カイルは、再び国王を見た。
「俺の娘の命も、救った」
カイルの声が、力強い。
「疑うなら、俺を疑え」
謁見の間が、緊張に包まれた。
貴族たちは、沈黙している。
カイル・ヴァレンティス侯爵。
冷酷な侯爵として恐れられる男。
その男が、リディアを庇っている。
セレナは、顔色を変えた。
「侯爵様……しかし……」
カイルは、セレナを見た。
冷たい、眼差し。
セレナは、言葉を失った。
国王が、沈黙を破った。
「静粛に」
国王の声が、謁見の間を制する。
国王は、リディアを見た。
そして、カイルを見た。
「カイル侯爵の言葉は、重い」
国王は、考え込むように頷いた。
「だが、この場で即断はできぬ」
国王は、手を上げた。
「後日、詳細を審議しよう」
国王の声が、厳かに響く。
「リディア、お前の論文を提出せよ」
「そして、セレナ」
国王は、セレナを見た。
「お前の秘薬についても、調査する」
セレナは、顔を強張らせた。
だが、頭を下げた。
「……はい、陛下」
国王は、玉座から立ち上がった。
「本日の謁見は、これまでとする」
国王の宣言が、謁見の間に響く。
貴族たちが、ざわめきながら退出を始める。
リディアは、その場に立ち尽くしていた。
心臓が、まだ激しく打っている。
カイルが、リディアの元へ歩いてきた。
そして、小さく呟いた。
「よくやった」
リディアは、カイルを見上げた。
涙が、滲んでいた。
「……ありがとうございます」
カイルは、無言で頷いた。
そして、リディアの肩に手を置いた。
温かい、手。
リディアは、震えが止まった。
謁見の間の出口で、セレナが振り返った。
冷たい視線が、リディアを捉える。
リディアは、その視線を受け止めた。
もう、逃げない。
セレナは、冷笑して去った。
リディアは、カイルと共に謁見の間を出た。
廊下に出ると、リディアは深く息を吐いた。
「まだ……終わっていません」
リディアの声が、小さく震える。
カイルは、リディアを見た。
「ああ。だが、お前は一歩を踏み出した」
カイルの声が、静かに響く。
「俺が、お前を守る」
リディアは、頷いた。
窓の外、夕日が沈んでいく。
謁見の間の緊張が、まだ胸に残っている。
だが、リディアの心には、小さな希望の灯火が灯っていた。
戦いは、まだ続く。
だが、もう一人ではない。
謁見の間。
豪華なシャンデリアが、天井から吊り下げられている。
壁には、金色の装飾が施されている。
赤い絨毯が、入口から玉座まで続いている。
貴族たちが、両側に並んでいる。
豪華なドレスと礼服を着て、互いに囁き合っている。
玉座には、国王が座っていた。
前回、リディアが見た時よりも、顔色が良い。
だが、まだ痩せている。
その隣には、王太子が立っている。
そして、壇上の近くには、セレナがいた。
金髪が美しく輝き、豪華なドレスを着ている。
謁見の間の扉が、開いた。
侍従が、声を上げた。
「ヴァレンティス侯爵、カイル・ヴァレンティス様、ご入場!」
貴族たちが、扉の方を見た。
カイルが、入ってきた。
銀髪、隻眼、黒い礼服。
威厳のある、姿。
カイルは、堂々と赤い絨毯を歩いた。
そして、その後ろから——。
リディアが、入ってきた。
深い青色のドレスを着て、凛とした表情。
貴族たちが、ざわめいた。
「あれは……リディア・アーシェンフェルトでは?」
「王宮を去った、あの娘か?」
「何故、ここに?」
囁き声が、謁見の間に満ちた。
リディアは、カイルの後ろを歩いた。
胸が、激しく打っている。
だが、リディアは顔に出さなかった。
堂々と、歩く。
リディアは、壇上の近くにいるセレナを見た。
セレナは、冷たい笑みを浮かべている。
その目は、リディアを値踏みしている。
リディアは、視線を逸らさなかった。
そして、さらに前方を見た。
アルヴィンが、王太子の隣に立っている。
アルヴィンは、驚愕の表情だ。
目を見開き、リディアを見つめている。
リディアは、アルヴィンを一瞥した。
そして、無視した。
カイルは、玉座の前に立った。
リディアも、その隣に立った。
カイルは、深く頭を下げた。
「陛下、お目にかかれて光栄です」
国王は、カイルを見た。
「カイル侯爵、よく来た」
国王の声は、以前よりも力強い。
だが、まだ弱々しい。
国王は、続けた。
「辺境の報告を、聞かせてくれ」
カイルは、頷いた。
「はい、陛下」
カイルは、貴族たちを見回した。
そして、宣言した。
「我が領地の医療改革について、報告いたします」
貴族たちが、注目した。
カイルは、リディアの方を向いた。
「薬師長、リディア・アーシェンフェルトが、報告します」
貴族たちが、再びざわめいた。
「薬師長……?」
「あの婚約破棄された娘が?」
「信じられない……」
リディアは、深呼吸をした。
そして、一歩前に出た。
リディアは、国王に頭を下げた。
「陛下、お目にかかれて光栄です」
国王は、リディアを見た。
その目には、興味の色がある。
「リディア・アーシェンフェルトか」
国王の声が、穏やかだ。
「カイル侯爵の薬師長だと?」
「はい、陛下」
リディアは、顔を上げた。
「私は、ヴァレンティス侯爵領で、医療改革を行いました」
リディアの声が、謁見の間に響く。
「その成果を、報告させていただきます」
国王は、頷いた。
「聞かせてくれ」
リディアは、鞄から報告資料を取り出した。
そして、貴族たちを見回した。
セレナが、冷たく笑っている。
アルヴィンが、困惑している。
他の貴族たちは、興味津々だ。
リディアは、報告を始めた。
「まず、新薬の開発についてです」
リディアは、資料を開いた。
「私は、魔力に依存しない、化学合成型の治療薬を開発しました」
貴族たちが、ざわめいた。
「魔力に依存しない?」
「そんなことが可能なのか?」
リディアは、続けた。
「この薬は、慢性疼痛に対して、95%の効果を示しました」
リディアは、グラフを見せた。
「治療実績は、300名。全員、回復しました」
貴族たちが、驚きの声を上げた。
「300名……?」
「全員回復……?」
リディアは、自信を持って言った。
「これにより、ヴァレンティス侯爵領の医療は、大きく改善されました」
国王は、興味深そうに聞いていた。
「素晴らしい成果だ」
だが、その時——。
セレナが、立ち上がった。
「陛下、お待ちください」
セレナの声が、謁見の間に響いた。
セレナは、優雅に前に出た。
そして、リディアを見た。
「リディア、あなたの薬は危険です」
セレナの声が、謁見の間に響く。
リディアは、セレナを見た。
心臓が、激しく打っている。
だが、リディアは冷静を装った。
「危険……ですか?」
「ええ」
セレナは、貴族たちの方を向いた。
「皆様、リディアの薬は、魔力を使っていません」
セレナの声が、懸念に満ちている。
「それは、我々の薬学の基本を無視しています。根拠が、不明確です」
貴族たちが、ざわめいた。
「確かに……魔力を使わない薬など……」
「聞いたことがない……」
セレナは、リディアを見た。
「リディア、あなたの薬の根拠を、説明できますか?」
リディアは、深呼吸をした。
そして、冷静に答えた。
「はい、説明できます」
リディアは、報告資料を開いた。
「私の薬は、薬草の化学成分を抽出し、精製したものです」
リディアは、図解を見せた。
「魔力ではなく、化学反応によって、治療効果を発揮します」
貴族たちが、興味深そうに聞いている。
リディアは、続けた。
「例えば、白い根草には、鎮痛作用のある成分が含まれています。私は、その成分を抽出し、純粋な形で投与しました。その結果、魔力を使わずとも、高い効果を得られました」
リディアは、データを提示した。
「治療前と治療後の比較データです。患者の痛みのレベルが、平均90%減少しました」
貴族たちが、驚きの声を上げた。
「90%……」
「本当に、そんなことが……」
だが、一部の貴族が、批判の声を上げた。
「だが、魔力を使わぬ薬など、邪道ではないか?」
「伝統を無視している」
リディアは、その貴族を見た。
「邪道……でしょうか?」
リディアの声が、静かだが力強い。
「私は、結果を出しました。300名の患者を、救いました」
リディアは、貴族たちを見回した。
「それでも、邪道と言えますか?」
貴族たちは、黙った。
国王が、口を開いた。
「リディア、お前の薬は、本当に安全なのか?」
リディアは、国王を見た。
「はい、陛下。安全です」
リディアは、続けた。
「副作用も、最小限に抑えられています。長期使用しても、依存性はありません」
その時、セレナが、再び立ち上がった。
「リディア、あなたは依存性がないと言いましたね」
セレナの目が、鋭い。
「では、あなたの薬の成分を、ここで公開できますか?」
リディアは、頷いた。
「はい、できます」
リディアは、資料を取り出した。
「私の薬の成分は、白い根草から抽出したアルカロイド、そして——」
リディアは、詳細に説明した。
貴族たちが、真剣に聞いている。
リディアは、説明を終えた。
「以上です。全て、公開可能です」
セレナは、顔色を変えた。
だが、すぐに笑顔を取り戻した。
「そうですか。では、安全なのでしょうね」
リディアは、セレナを見た。
そして、静かに言った。
「では、セレナ様」
リディアの声が、謁見の間に響く。
「あなたの秘薬の成分を、ここで公開できますか?」
貴族たちが、息を呑んだ。
セレナは、顔色を変えた。
「私の秘薬……?」
「はい」
リディアは、セレナの目を見た。
「あなたの美容秘薬です。成分を、公開できますか?」
セレナは、しばらく黙っていた。
そして、冷たく笑った。
「それは、企業秘密です」
リディアは、頷いた。
「企業秘密……ですか」
リディアは、貴族たちを見回した。
「私は、全てを公開できます。ですが、セレナ様は、公開できないそうです」
リディアの声が、静かだが鋭い。
「どちらが、信頼できるでしょうか?」
貴族たちが、ざわめいた。
「確かに……」
「公開できないのは、怪しい……」
セレナは、顔を強張らせた。
「リディア、あなた……」
国王が、手を上げた。
「静粛に」
国王の声が、謁見の間を制する。
国王は、リディアを見た。
「リディア、興味深い報告だ」
国王は、続けた。
「後日、詳細を審議しよう」
セレナは、顔を強張らせた。
そして、国王の方へ進み出た。
「陛下、お待ちください」
セレナの声が、焦りを帯びている。
「彼女は、婚約を破棄された身です」
セレナは、リディアを指差した。
「第三王子殿下が見放した、不出来な元婚約者です」
セレナの声が、謁見の間に響く。
「そのような者の言葉を、信用できません」
貴族たちが、再びざわめいた。
「確かに……婚約破棄された身で……」
「殿下が見放した娘の言葉など……」
リディアは、唇を噛んだ。
心臓が、激しく打っている。
また、前世と同じ。
告発者が、信用されない。
リディアの手が、震えた。
その時。
重い足音が、響いた。
カイルが、立ち上がった。
謁見の間が、静まり返る。
カイルの隻眼が、貴族たちを見渡す。
冷酷な、威圧感。
貴族たちが、息を呑んだ。
カイルは、国王を見た。
「陛下」
カイルの声が、低く響く。
「彼女は、俺の領地で実績を上げた」
カイルは、リディアの方を向いた。
「三百名の患者を、救った」
カイルは、再び国王を見た。
「俺の娘の命も、救った」
カイルの声が、力強い。
「疑うなら、俺を疑え」
謁見の間が、緊張に包まれた。
貴族たちは、沈黙している。
カイル・ヴァレンティス侯爵。
冷酷な侯爵として恐れられる男。
その男が、リディアを庇っている。
セレナは、顔色を変えた。
「侯爵様……しかし……」
カイルは、セレナを見た。
冷たい、眼差し。
セレナは、言葉を失った。
国王が、沈黙を破った。
「静粛に」
国王の声が、謁見の間を制する。
国王は、リディアを見た。
そして、カイルを見た。
「カイル侯爵の言葉は、重い」
国王は、考え込むように頷いた。
「だが、この場で即断はできぬ」
国王は、手を上げた。
「後日、詳細を審議しよう」
国王の声が、厳かに響く。
「リディア、お前の論文を提出せよ」
「そして、セレナ」
国王は、セレナを見た。
「お前の秘薬についても、調査する」
セレナは、顔を強張らせた。
だが、頭を下げた。
「……はい、陛下」
国王は、玉座から立ち上がった。
「本日の謁見は、これまでとする」
国王の宣言が、謁見の間に響く。
貴族たちが、ざわめきながら退出を始める。
リディアは、その場に立ち尽くしていた。
心臓が、まだ激しく打っている。
カイルが、リディアの元へ歩いてきた。
そして、小さく呟いた。
「よくやった」
リディアは、カイルを見上げた。
涙が、滲んでいた。
「……ありがとうございます」
カイルは、無言で頷いた。
そして、リディアの肩に手を置いた。
温かい、手。
リディアは、震えが止まった。
謁見の間の出口で、セレナが振り返った。
冷たい視線が、リディアを捉える。
リディアは、その視線を受け止めた。
もう、逃げない。
セレナは、冷笑して去った。
リディアは、カイルと共に謁見の間を出た。
廊下に出ると、リディアは深く息を吐いた。
「まだ……終わっていません」
リディアの声が、小さく震える。
カイルは、リディアを見た。
「ああ。だが、お前は一歩を踏み出した」
カイルの声が、静かに響く。
「俺が、お前を守る」
リディアは、頷いた。
窓の外、夕日が沈んでいく。
謁見の間の緊張が、まだ胸に残っている。
だが、リディアの心には、小さな希望の灯火が灯っていた。
戦いは、まだ続く。
だが、もう一人ではない。