大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

2章:新しい部長と、暗い影

 翌朝、目覚ましの音がやけに耳に刺さった。
 身体がベッドに縫い付けられたみたいに重くて持ちあがらない。

 そのせいか、いつもより起きるのが十分遅れた。
 慌てて身体を起こし、顔を洗って、着替えて、洗濯機を回す。

 朝食の準備とお弁当のおかずと夕食の下ごしらえもいくつか一緒に。そしてある程度めどがついたら化粧をして、洗濯物を干す。それから匡輔を起こした。

 匡輔は時計を見るなり飛び起きた。

「おい、今日早いって言ってただろ!」
「え……そうだった? 昨日そんな話してないし」
「言ったって言ったら言ってるんだよ!! グダグダ言い返すな、気分悪い!」

 苛立った様子で匡輔が洗面所に速足で歩いていく。
 だったら自分でもアラームをかければいいのに、という言葉は飲み込んだ。

「おい、まだかよ」

 匡輔は私の隣でスマホを見ながら、イライラした様子でこちらを急かしてくる。
 私は慌ててお弁当を詰めていた。

「ちょっと待って……! 先に朝食は?」
「いらない! そんなの食ってたら間に合わない!」
「そんな急ぐならお昼も食堂で食べたら……」
「もったいないだろ!」

 慌ててお弁当箱のふたを閉めて、バッグにお弁当箱、お箸、そして保冷剤を入れる。

「はい、できたよ」
「ん」

 匡輔はお弁当の入ったバッグを受け取り、そのまま家を出てしまう。

 同じ会社に向かうのだから、一緒に出ればいいはず。だけど、営業部の彼は朝から訪問先が詰まっていたりしてなかなか一緒に出社はしていない。

 私は自分の分のお弁当を完成させてテーブルに置くと、匡輔の食べなかった朝食をラップして冷蔵庫に入れ、自分の朝食を素早く食べる。
 簡単に床を掃除してから部屋を出た。

 朝5時半に起きても、全部完璧になんてなかなか難しい。
 そもそも私がただ単純に主婦には向いていないだけのような気もしている。
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