大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。
6章:決着
「男性の不倫ってさ、結局、浮気される女が一番悪いよねぇ。だって旦那さんをないがしろにしてる人ばっかりじゃない。だから不倫なんてされるんだよね」
朝、美晴さんの「おはようございます」にそっけなく挨拶だけ返して通り過ぎた瞬間、背後で彼女の声が弾んだ。
もう一人の受付の女性と話しているようだ。でも、私にわざと聞かせている感じがした。
「私の知り合いにもぉ、奥さんハズレですっごいかわいそうな人がいるの。いっつも愚痴っててぇ。ほんと、かわいそ〜」
唇を噛んで、歩くスピードを落とさないようにする。でも、身体が勝手にこわばってしまった。
その時、ぽんと肩が叩かれた。
「おはよう、桐沢」
振り返ると、穂高が立っていた。
「おはようございます」
「うん。今日は朝から新商品会議だからな」
「……はい」
頷いて彼の顔を見ると、穂高は目を細めていた。
彼の落ち着いたまなざしが、私の気持ちもゆっくり落ち着かせていく。
「そういえば昨日の資料さ、よく整理してくれて助かった。部長会議で詰められなくて済んだよ」
「少しでも役に立ったなら、よかったです」
「少しどころじゃないさ」
エレベーターが来て、人の流れに押されるように乗り込む。
穂高は自然な動作で、私のすぐ後ろに立つ。
狭い箱の中、空調の音だけが聞こえた。
「……大丈夫か?」
その声は、周囲に聞こえないくらい低くて柔らかい。
人込みを気遣っての言葉なのか、それとも、さっきの言葉を聞いていての問いなのか……。
たぶん後者なんだろうな、と思う。
「大丈夫です。本当に……案外、大丈夫で」
そう言うと、穂高は短く「そうか」と頷いた。
私は前を向いたまま、そっと呼吸を整えた。
前は、穂高には知られたくないって思ってた。
結婚に失敗した、と思われて軽蔑されたくなかったから。
でも穂高は、夫の浮気を知っても、人として、そして上司として、全面的に私の味方でいてくれてる。それがひしひしと伝わってくる。
私はこれから先、もっとつらいものを見ても、自分の心が壊れないでやっていける気がした。
朝、美晴さんの「おはようございます」にそっけなく挨拶だけ返して通り過ぎた瞬間、背後で彼女の声が弾んだ。
もう一人の受付の女性と話しているようだ。でも、私にわざと聞かせている感じがした。
「私の知り合いにもぉ、奥さんハズレですっごいかわいそうな人がいるの。いっつも愚痴っててぇ。ほんと、かわいそ〜」
唇を噛んで、歩くスピードを落とさないようにする。でも、身体が勝手にこわばってしまった。
その時、ぽんと肩が叩かれた。
「おはよう、桐沢」
振り返ると、穂高が立っていた。
「おはようございます」
「うん。今日は朝から新商品会議だからな」
「……はい」
頷いて彼の顔を見ると、穂高は目を細めていた。
彼の落ち着いたまなざしが、私の気持ちもゆっくり落ち着かせていく。
「そういえば昨日の資料さ、よく整理してくれて助かった。部長会議で詰められなくて済んだよ」
「少しでも役に立ったなら、よかったです」
「少しどころじゃないさ」
エレベーターが来て、人の流れに押されるように乗り込む。
穂高は自然な動作で、私のすぐ後ろに立つ。
狭い箱の中、空調の音だけが聞こえた。
「……大丈夫か?」
その声は、周囲に聞こえないくらい低くて柔らかい。
人込みを気遣っての言葉なのか、それとも、さっきの言葉を聞いていての問いなのか……。
たぶん後者なんだろうな、と思う。
「大丈夫です。本当に……案外、大丈夫で」
そう言うと、穂高は短く「そうか」と頷いた。
私は前を向いたまま、そっと呼吸を整えた。
前は、穂高には知られたくないって思ってた。
結婚に失敗した、と思われて軽蔑されたくなかったから。
でも穂高は、夫の浮気を知っても、人として、そして上司として、全面的に私の味方でいてくれてる。それがひしひしと伝わってくる。
私はこれから先、もっとつらいものを見ても、自分の心が壊れないでやっていける気がした。