大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

9章:勘違いでは、ない?

 解散という段になった時、穂高がこちらを見ながら近づいてくるのが見えた。

 私はやけに混乱して「めちゃくちゃ酔っちゃったのでこれで!」と急いで踵を返す。

 そして慌てて帰宅した私は、静かな部屋でひとり腰を下ろした。

(なんだったの……)

 まだ掴まれていた右手が熱い。

 ――俺はね、元々この会社にくるのはかなり悩んでたんだ。父親についてはあまりいい思い出はなくてね。でも……ある女性がいるって分かってここに来た。来てよかったよ。会社を見ていたら、前より少しは父親のことがわかったし、なにより、元気のなかったその女性も元気になったのを近くで見守れたから。だから、俺はここにきてよかったと思ってる。

 その女性ってまさか私じゃないよね? 考えすぎだ。

 だってあんな別れ方して、私は結婚して失敗もして。それも全部見られて。そんなわけない。

――でもな、俺は千紘から踏み込んできてくれるのを、ずっと待ってるんだ。

 私はバツイチだ。私が踏み込むなんてできるはずない……。
 それに、もし勘違いだったらもう立ち直れない。

 その時、ぶぶ、とスマホが震えた。一瞬、穂高からかと思った。

 でも、よく考えてみたら今の私的なメッセージIDを穂高は知らない。
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