Good day ! 6
カレーのしょうちゃんとお父さん
ある日のこと。

大翔が乗務の前に更衣室で着替えていると、入り口のドアが開いて話し声が聞こえてきた。

「翼ー、今日カレー作ってくんない?」
「やだよ。なんで俺がお前の為に作らなきゃいけないんだ」
「だって舞ちゃん今、ロンドンに飛んでいないんだもん」
「だからって、なんで俺が。カレーくらい、自分で作れ」
「ナンでなくてもいいからさ」
「いい加減やめれ」

近づいてきた二人は大翔に気づき、「お疲れ様です」と頭を下げる。

お疲れ様と答えた大翔は、何気なく目を向けてハッとした。

二人ともまだ若い青年で、一人は整った顔立ちで背が高く、もう一人のなんとも憎めない愛嬌のある顔には見覚えがあった。

(この彼、この間の?)

舞をマンションまで送って行った時、「舞ちゃん!」と駆け寄っていたのを思い出す。

会話の内容も、今と同じカレーの話だった。

そして大翔は再びハッとする。

(もしかして、彼女と同棲している恋人とか?)

今夜カレーを作ってくれと舞に言ったセリフからして、きっとそうなのだろう。

(俺が彼女を送って行ったこと、まさか誤解されてないよな?)

そう思っていると、カレーの彼に恐る恐る声をかけられた。

「失礼ですが、ひょっとして、相澤キャプテンでいらっしゃいますか?」
「ああ、そうだ」
「やっぱり! 舞ちゃんから話を聞いたんです」

途端に大翔は、マズイと焦った。

「いや、違うんだ。誤解しないでくれ」
「は?」

カレーのしょうちゃんは、なんのことかとばかりに首をひねる。

(しまった、先走ったか。彼女は俺が送って行ったことを、しょうちゃんには上手くごまかしたのかもしれない)

だとしたら、自分の口からは言えない。

(だがもし、しょうちゃんが納得していないとしたら? 今、俺に直接探りを入れようとしているのかもしれない)

思わず大翔はゴクリと喉を鳴らした。

「相澤キャプテン、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。だがこれだけは言わせてくれ。俺は今つき合っている彼女はいないし、気になる女性もいない。軽く女性に手を出すタイプでもないから、全くもって女性との関わりはない。それだけは信じてほしい」

カレーのしょうちゃんは、ポカンとしながら「はあ……」と頷く。

「それでは、これで失礼する」

大翔はキリッと表情を引きしめると、颯爽と更衣室をあとにした。
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