13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。

①②

 蒼士が息を呑む。
 咄嗟に視線を逸らし、固く目を瞑った。
 反応が怖くて見られない。

「美澪」
 呼ばれても体が強張って反応できなかった。
「美澪、結婚していたのか……」
 あからさまに愕然としている。呆れられただろう。そんな人がキスを許すなんて。
 けれど、蒼士はまず夫が見舞いに来なかったことに怒りを露わにした。
「違うの。もう、離婚してる。だから、私が倒れたのも入院したのも知らないの」
「相手には新しい家族が?」
 無言で頷く。

 美澪は結婚から離婚に至った経緯を説明し始めた。
「その人とは、専門学生時代に出会って付き合っていた。お互い若かったし、特に結婚を意識するでもなかった。一つ上だけど、向こうは別の大学に通っていて、私の方が先に専門学校を卒業する予定だった。でも、卒業間際に妊娠が発覚して……なんとか私は卒業できたんだけど、悪阻がひどくてとても働けなかった。彼は子供を育てるために大学を中退して働いてくれた。お互いの両親も怒りながらも手助けしてくれたし、一先ずケジメとして入籍しなさいって言ってくれて、一緒に住み始めたんだ。それまでは良かったんだけど……」
 ストレスを爆発させた夫は、美澪に八つ当たりをするようになってしまった。

「俺ばかり働かせて、お前はずっと家で寝てるのかって怒鳴られて……そりゃ、男の人からすれば悪阻なんて分からないよね。でも私も辛さを理解してもらえないのが辛くて、言い返しちゃって。顔を合わせば喧嘩ばかりしてた」
「それは、美澪は何も悪くないじゃないか」
「でも、もっと言いようがあったかもしれないなって反省して。それで余計に辛くなって、そのうち、夫との向き合い方が分からなくなった。辛くて実家に逃げ帰って、出産するまでは結局マンションには帰らなかった」
 思えばあの頃、早産の恐れがあって長期に渡り入院した。けれど夫は面会には現れなかった。
 仕事が忙しいとでも言われればまだ慰めになったかもしれない。実際、夫から返ってきた言葉は『俺を責めたいのか』だった。夫が与えたストレスでそうなったと美澪から責められていると感じ取ったようだ。
 それ以来、無事出産するまで連絡はしないでおいた。きっと夫も気が立ってる。でも子供の顔を見れば、変わってくれると信じていた。

「そうはならなかったということだな?」
 蒼士の問いに頷く。
「二人とも、若すぎたんだと思う。二人の仲も修復できてないのに、初めての子育ても重なって、夫のストレスは溜まる一方だった。子供が夜泣きを始めると『黙らせろ』と私を罵倒するし、家事がまともに出来ないのも責められた。家でいるのになんでこれくらい出来ないのかって。ひたすら謝ってたけど、少しくらいは私の話も聞いて欲しかった。でも言っちゃいけないと思って我慢してた」
 思えばあの頃から、言いたいことを言えない性格になってしまったような気がする。
 課長にだって、昔の美澪なら一言どころか論破するまで喰いついていただろう。けれど、穏便に済ませたいと思うばかり、自分の意見を飲み込む術を覚えてしまったのだ。

 蒼士は引くどころか、真剣に美澪の話を聞いてくれた。
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