13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。

①⑤

 美澪が泣き止むのを待っていると、閉店時間だと案内されてしまった。
 蒼士はその場で会計を済ませると、店内に他の客がいないのを確認する。
「美澪、酔ってしまったことにして、俺で顔を隠せばいい」
 蒼士は美澪をお姫様抱っこの要領で抱き上げた。

「蒼ちゃん……」
「俺に顔を埋めて。泣き顔、他の誰にも見せたくない」
 こんな泣き腫らした顔さえも、蒼士は独り占めしたいと言った。
 泣いたのが蒼士なら価値もあるものだが、美澪が泣いたところで誰も関心なんて持つわけもない。
「誰も見ないよ」自虐して言ったが、蒼士は至って真剣だった。

 子供の頃から美澪が泣いているなんて殆どなかったから、余程なのだと捉えたようだ。

「美澪、甘えて」
 この顔で微笑まれると、反抗も不可能だ。
 首に腕を回し、蒼士の首許に顔を埋めた。

「オーナーに宜しく伝えておいてくれ」
 スタッフに声を掛けると、車へと戻る。外に出ると道行く人達の声が聞こえて、注目されているのではないかと気になって仕方がない。
 蒼士に隠した顔を上げられないまま移動する。

 美澪とは反対に、蒼士は周りに自慢するように、時折美澪の髪に鼻先を擦り寄せアピールする。
「早く二人きりになりたい」
 耳許で囁くのもわざとだ。
 美澪は碌に返事も出来ず、恥ずかしさのあまり力の入らない手で蒼士の肩を叩いた。
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