13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。

①⑦

 課長は蒼士の声が若いのを察すると、下手に出ていた態度を一変さ、声を荒げた。
『疲れているのは他の社員も同じだ。乙部だけが例外なんてあり得ない。一週間も仕事を休んだんだ。充分だろう』
「ほぅ、なるほど……では乙部さん以外にも、過労で倒れる危険性の高い社員がいるという判断でよろしいですか? そうなると……そうだな。医者としては放って置けない。こちらから会社の実態調査を依頼しておかねばならない」
『そんなのは無用だ。極、一般的な会社に過ぎん。ただ休んだ分の仕事が溜まっているからという報告をだな……』
「その溜まった仕事を全て乙部さんに押し付けると……そうなればまた残業の日々が予想されますね。次に過労で倒れると命の保障はありません。もし、社員が過労で亡くなったなんて事態になれば、一番に訴えられるのは課長、貴方ということになりますが」

 蒼士に言いくるめられて、最初こそ威勢の良かった課長も反論できなくなってきた。
 しかし蒼士からの糾弾は止まらなかった。

「聞けば自宅に帰れないほどの残業をさせていたのだとか? 乙部さんは肉体的にも精神的にも仕事に復帰できる状態ではありません。会社……特に上司への強迫観念も酷く、今回も精神科への転科も視野に入れていた程です。入院中の繰り返される着信とメッセージ。こんな時間に電話をかけるのも日常茶飯事だったのですか?」
『ま、まさか……今回が初めてですよ……』
「それも調べれば明らかになりますけれど。とにかく、乙部さんにはドクターストップを言い渡しておりますので、仕事はこのまま退職してもらいます。会社の方へは私から連絡をし、現状をお話しした上で手続き致しますので」

 会社の上層部に自分の実態を知らされると言われた課長は焦りだし、『ちょっと待ってくれ』と繰り返す。しかし言い訳の一つも喋れず、美澪の手続きは自分がするとだけ必死に訴えた。

 蒼士は構わず電話を切った。
「これで、明日もずっと一緒にいられる」
「そうじゃなくて。会社……あの、課長は……」
「課長をあのままにしておくと、美澪が辞められたとしても第二、第三の美澪が生まれるだけだ。課長が部下を制圧しているなら、もっと上層部を脅すしかない。会社に置いている荷物を撮りに行かないといけないんだろう? 明日は付き添うから。後のことは俺に任せておけ」
「私、辞められたの?」
「あぁ、ほぼ確定だな。有休も退職金も全てもらえるように動くから、安心しろ」

 虚を突かれた美澪に、蒼士は「もう、大丈夫だから」と自信に満ちた笑みを浮かべた。
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