冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
第3話 契約という名の運命
応接室を出て、エレベーターで一階まで降りた。
湊さんの言葉が、脳内で何度も反芻される。
『今夜、話がある。七時に一階のロビーで待ってろ』
時計を見ると、まだ午後三時。
いったん父の見舞いに行こうかと思ったが、今日は午後に大きな検査が入っていて、面会は控えてほしいと看護師さんに言われていたことを思い出す。
……このままアパートに帰っても、落ち着かないし。
私は、近くのカフェで時間を潰すことにした。
コーヒーを注文し、窓際の席に座る。
けれど、ちっとも味は分からなかった。
湊さんは、何の話をするつもりなんだろう。
採用が決まったことについて? それとも――あの夜のこと?
『忘れる約束』だって、あんなに念を押し合ったのに……。
◇
午後七時。私は再び、MINATO Holdingsのビルの前に立っていた。
十一月下旬の夜は冷え込む。吐く息が白く見える。
コートの襟を立て、私はロビーへ入る。
広々としたロビーには、まだ残業をしている社員が数人いた。
「高嶺様ですね。桐生がお待ちです。こちらへどうぞ」
受付の女性が、エレベーターまで案内してくれる。
最上階のボタンが押される。
上昇するにつれて、緊張が高まっていく。
扉が開くと、そこは重厚な雰囲気の役員フロアが。
「社長室は、こちらです」
案内された先は、大きな扉。
――コンコン。
ノックの音が、静かな廊下に響く。
「入れ」
低い声がし、扉を開けると――。