冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

第3話 契約という名の運命


応接室を出て、エレベーターで一階まで降りた。

湊さんの言葉が、脳内で何度も反芻される。

『今夜、話がある。七時に一階のロビーで待ってろ』

時計を見ると、まだ午後三時。

いったん父の見舞いに行こうかと思ったが、今日は午後に大きな検査が入っていて、面会は控えてほしいと看護師さんに言われていたことを思い出す。

……このままアパートに帰っても、落ち着かないし。

私は、近くのカフェで時間を潰すことにした。

コーヒーを注文し、窓際の席に座る。

けれど、ちっとも味は分からなかった。

湊さんは、何の話をするつもりなんだろう。

採用が決まったことについて? それとも――あの夜のこと?

『忘れる約束』だって、あんなに念を押し合ったのに……。



午後七時。私は再び、MINATO Holdingsのビルの前に立っていた。

十一月下旬の夜は冷え込む。吐く息が白く見える。

コートの襟を立て、私はロビーへ入る。

広々としたロビーには、まだ残業をしている社員が数人いた。

「高嶺様ですね。桐生がお待ちです。こちらへどうぞ」

受付の女性が、エレベーターまで案内してくれる。

最上階のボタンが押される。

上昇するにつれて、緊張が高まっていく。

扉が開くと、そこは重厚な雰囲気の役員フロアが。

「社長室は、こちらです」

案内された先は、大きな扉。

――コンコン。

ノックの音が、静かな廊下に響く。

「入れ」

低い声がし、扉を開けると――。
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