恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで【完】
新たな日々とこれからの誓い
 あれからNRGグローバルホールディングスには誠心誠意謝罪をし、何度も話し合いを重ねて無事に和解して両社は対等な立場での協力関係を築くこととなった。

「今回の件、正直どうなるかと思いましたが……」

 社長室でそう口にしたのは幹部の一人。

「……上手く纏まったのは真白くんの働きが大きいな」

 社長がそう続けると周囲は頷いた。

 そんな中、当の大輔は少し気まずそうにしながらも、

「いえ……自分に出来ることをしたまでです」

 控えめに答えていた。

 そして充輝と来海は、これまでと変わらぬ場所でそれぞれ仕事に向き合っていたが、二人の職場での環境も少しずつ変わっていった。

「あ、お疲れ様、充輝」
「お疲れ」

 充輝と真帆の縁談が白紙になったことから、周りも二人の交際を微笑ましげに見守っていることもあり、社内でも比較的会話を交わす機会が増えていた。

 だけど、何より変わったのは――充輝の父親だった。

「ねぇ聞いた? 今年、社員旅行があるとか」
「聞いた聞いた! 今までそういうの無かったもんね。行き先どこだろ?」

 以前の威圧的な態度は影を潜め、今では社員を気遣う言動が増え、更には社員が楽しめる企画なども積極的に採用していっているのだ。

「社員旅行の案を出したのって社長らしいよね? しかもさ、最近の社長って前より優しいよね」
「分かる分かる、前より話し易いしな」

 そんな声が自然と聞こえるようになっていて、充輝や来海も嬉しく思っていた。


 それから暫くして、驚く話が二人の元へ舞い込んできた。

「えっ、そうなの?」

 来海が驚いたように充輝を見る。

「ああ。何か、真帆さんの方が一目惚れしたらしい」

 政略結婚で充輝と結婚するはずだった真帆が、共に仕事をするうちに大輔に惹かれたという。

「二人は海外支社で働く仲間になるんだよね?」
「ああ。その打ち合わせで何度も顔を合わせてるうちにそうなったとか。真帆さんから連絡が来て何事かと思ったら、真白さんのことを色々教えて欲しい……って。俺はそんなにアイツのこと知らないけど、仕事の出来る真面目な奴だって言っておいたよ」
「そっか。でも、まあ良かったのかな? 会社の為にも二人には頑張ってもらいたいね」
「そうだな」

 穏やかな日々を送る中、充輝と来海もまた、新たな一歩を踏み出していた。

 一緒に暮らそうと決めてから約二ヶ月、新居を探してようやく良い物件を見つけた二人は同棲を始めることになったのだ。
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