恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで【完】
Epilogue
 プロポーズから暫くの間、二人の日々は目まぐるしくも幸福に満ちていた。

 その中で最初に迎えた大きな節目が、充輝による来海の両親への挨拶だった。

 当日の朝、充輝は自宅マンションの玄関に立ったまま暫く動けずにいた。

 何度も整えたはずのネクタイに手をやりながら深く息を吐く。

 深呼吸をしても胸の高鳴りは収まらず、こんなにも緊張していることに思わず苦笑が漏れた。

 そして、車で来海の実家へ向かい、自宅近くのコインパーキングに車を停めた充輝は再び深い息を吐く。

 緊張をする充輝を前にした来海はくすりと笑う。

「そんなに構えなくても大丈夫だって。うちの親は怖くないよ」
「怖くなくても緊張はするんだよ……」

 そう言いながらも隣に居る来海の存在が不思議と背中を押してくれて、覚悟を決めた充輝は車を降りた。

 実家を訪れ居間へ通された充輝は、これまで感じたことのない緊張に包まれていた。

 向かいには来海の両親が座り、穏やかな表情ではあるもののその視線を正面から受けるだけで充輝の背筋が自然と伸びていく。

 そして充輝は真っ直ぐ顔を上げた。

「初めまして。来海さんとお付き合いさせていただいている羽柴 充輝と申します。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」

 きっちりとした挨拶に来海は隣でほんの少しだけ苦笑するけれど口は挟まず充輝に任せることにした。
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