麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
11. 忍び寄る影
今、リードネストとモモネリア、ローネルは街の市場に来ている。
外国の市場になどはじめて来たモモネリアは、そこかしこで賑わう風景を見ているだけで、ウキウキと楽しい気分になってくる。
隣を歩くリードネストの三角耳と尻尾も忙しなく動いていて、彼も楽しんでくれていることが伝わった。
ただし、リードネストの場合、楽しそうにしているモモネリアを見るのを喜んでいるようにも思うが。
馬車が通れるほど、広い道を挟んで両側にズラッと様々な露店が並んでいる。
一番多いのは、食べ歩きや外で食べることを目的に作った、手軽な料理を提供している店だ。
この街の名物料理である刻んだ野菜とひき肉をこねて作った餡を薄い皮で包んで焼いたもの、あずきを甘く似たあんこをパンに似た生地で包んで蒸しあげたもの、アヒル肉をこんがり焼いてもちっとした皮で野菜と濃いめのタレと共に巻いたもの。
香ばしいかおりが、鼻をくすぐり食欲をそそる。
それ以外にも、手作りの服や雑貨、子供のおもちゃやドライフラワー。
古本のお店もある。
「わぁ!とっても綺麗!リード、みて!!」
モモネリアは目をキラキラさせてはしゃぎながら、手作りの小物類が並ぶ露店で足を止めた。
小さな薄桃色の貝殻と真珠でつくられた髪留を指差して、リードネストに笑顔を向ける。
彼女はそれを手に取って、脇に置いてある小ぶりの丸い鏡の前で自分の髪の毛に合わせてみせた。