麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
16. 新たな形。そして、共に
教会での一件があったあの日から、八ヶ月が経とうとしている。
その間色々なことがあったが、大きな出来事がひとつあった。
それは、“彼“が、帰ってきたことだーーー。
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結婚式に向けて準備を進めていたある日。
「.......もうすぐ、結婚式ね。緊張してきちゃう」
「そうだな。そんなに緊張しなくても、モモネリアは誰よりも美しい。堂々としていたらいい」
ちゅっ、とリップ音を鳴らして、自分の隣に腰掛ける愛しい番の額にキスを贈るリードネスト。
彼のふわふわの尻尾が、モモネリアの背中をくすぐっている。
「......もう。そういう問題じゃないの」
モモネリアはそんな彼の甘い言葉に未だ慣れず、照れ隠しで唇を尖らせ抗議する。
「ふふ。そうか?......俺は、楽しみで仕方ないからな。お前が名実ともに、俺の妻になってくれる日だから。......さ、明日も早い。そろそろベッドに入ろう。せっかく湯で温まった体が冷えて、風邪をひくといけない」
自分たちが腰掛けているベッドを振り返り、さっと上掛けをめくる。
ポムポムと手で示し、モモネリアをそこへ促した。
「.....うん。ありがとう」
彼女は、優しい婚約者の行動に頬を緩めながら、ゆっくりと示された場所へ体を沈めた。
リードネストは、すぐ隣に横になり、自分の大きな胸に大切な番を抱きすくめ、温める。
「........モモネリア。こっちを向いて?」
「...........」
モモネリアが顔をあげた瞬間、空気がふわりと動いて、彼女の優しく甘い花のような香りが二人を包んだ。
湯浴みで健康的な色が差しているモモネリアの顔を見つめ、桃色に色づくふっくらした唇にゆっくりと自身のそれを近づける。
重なり合おうとした瞬間.......。
コンコン。
二人の寝室のドアが、ノックされた。
「.......誰だ?」
怪訝そうに、ドア越しに尋ねるリードネスト。
「......お休みのところ、申し訳ありません。旦那様、お客様です」
カーヴィンの声が、静かに響く。