麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

8. 秘密の花畑と巡り合い

「リード.......そろそろ下ろして」


 モモネリアは、リードネストを軽く睨んだ。


「どうして?モモネリアの席はここだろ?」


 ニコニコと嬉しそうなリードネストが、当たり前のように指差したのは今、モモネリアが座っている場所。

 彼の膝の上だ。

 もう最近はここがモモネリアの定位置で、運良く隣り合わせに座れても限りなく距離はゼロに近い。

 つまり、超至近距離だ。



「.........はぁ」


 このやりとりも、何度したかわからない。

 モモネリアはわずかに抵抗してみたが、やはり無理そうなので、早々に諦めてため息を吐く。

 そっとリードネストの膝の上から、馬車の小さな窓を見遣れば、見慣れない景色が広がっている。

 リードネストの邸は都心に近い場所だったので、外に出て少し歩けば、様々なお店が立ち並び、たくさんの人で賑わっていた。

 その風景とは、全く異なる田舎道。

 太陽を受けて輝く木々たちが、どんどん走り去っていく。

 違う色彩の花々が蕾をつけ、大小に開いた花びらを心地よさげにふるわせて、馬車の中からでも気持ちいい風が吹き抜けていることがわかる。

 今、モモネリアはリードネストの仕事に同行し、外国に来ている。

 と言っても、リードネストが出張に出る際に「モモネリアと離れたくないから行かない」と駄々を捏ね譲らなかったため、急遽モモネリアもついていくことになったのだ。

 リードネストは合間で仕事をこなし、自由な時間はモモネリアと旅行のつもりで楽しむことにしたらしく、モモネリアも実は少し浮かれていた。
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