御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
02 戻ってきた優しさ
 父から連絡をもらった日、明日にでも町工場がなくなってしまうのではないかと危惧していたけれど、どうやらそういうわけでもないらしい。
 店じまいするにしても準備が必要とのことで、会社のことは自分でやるから安心しなさいという旨を父から聞かされていた。
 まだ受注している分の仕事が残っているらしく、春先まではなんとか営業を続けるそうだ。

 しかし、従業員には既に経営が厳しいこと、来年の夏頃には完全に工場をたたむ方向で話をしたらしい。
 早めに次の行き先を見つけるように告げたものの、ほとんどの従業員が最後まで残ると言ってくれたようだ。
 父も、なんとか彼らの給料だけは保証すると言って頑張っているらしい。

 私は仕事をしながらも、なんとか受けられる融資はないものかと探した。
 だけど、先が見えない町工場に融資してくれる銀行や出資してくれる会社など、そう簡単には見つけられない。

 そもそも、うちのような工場に対する国内需要も少ないのだ。
 生産拠点は安価な海外へと移り、一部の大手企業に至っては下請け企業ごと内部に取り込んで技術を得たのちに自社生産しているところが多い。
 うちは元々精密機械全般にいろいろとやっていたけれど、縮小に縮小を重ねて、いまの精密医療機器の部品生産だけになってしまった。

 もう、助けを求めて手を伸ばしても、握ってくれるような状態ではない。
 既に、手を伸ばす時期はとっくに過ぎ去っていたのだ。

 それでも私は諦めきれずに、週末になると少ない貯金をきり崩して実家へ帰り、どうにかならないか知り合いを訪ねて回った。

 田舎は父と同じように小さな会社を経営している個人商店も多い。
 そこで情報を集めてみたけれど、ついぞ有益な情報を得ることはなく、私は意気消沈して都内へ戻った。

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