【番外編】あなたが白制服に着替えたら、それが愛のはじまり
あなたに、逢いたかった
「成瀬。休暇申請出したのか?」
職場の上司でもある迫田3佐が昼休憩をしている柊慈に訊ねた。
「ええ、家の用事で休みをいただきます」
「弔事か?」
「いえ、そうではなくて…。実は鹿児島にきてから妻の元気がなくて、ちょっとした旅行に行ってきます」
「元気がないってホームシックか?」
「たぶん。以前に比べて涙もろくて、あと昼間でも眠気が強いみたいで」
「…妊娠してないか、奥さん」
「妊娠ですか?」
「俺の奥さんもよく昼寝をしていたよ。眠くて眠くてしかたないってさ」
柊慈は腕組をして考える。
「妊娠の初期症状って”つわり”じゃないんですか?」
「人によって違うらしいぞ。市販の検査薬で調べてみたらどうだ」
「…はい」
眠気と妊娠がつながらない柊慈は小首を傾げたままだった。
明日の旅行に向けて早く帰りたかった柊慈だが職場を出たのは21時だった。
門を出てすぐの信号機が赤で家路に向かう右ウィンカーを出して止まった。
そのとき、スマホに夏帆からLINEメッセージがポップアップ表示された。
『旅行準備はOKだよ。眠たいから先に横になるね』
「……」
柊慈は前方を見つめ考える。
信号が青になった瞬間、ウインカーを逆に切り左折をした。
あるものを購入するために。
※
旅行当日の朝。
「ごめん、寝坊しちゃってっ」
夏帆が急いで着替えながら柊慈に謝る。
「俺もつい二度寝してしまった」
柊慈も急いで歯を磨く。
目的の島は鹿児島市内から運行されているフェリーに乗らねばならない。中継地の島に上陸して、さらに連絡船に乗り換えで行く。
「フェリーの時間は何時だっけ?」
「10時30分っ」
身支度を整え準備完了となり、
「じゃあ、行こう」
夏帆が柊慈に声をかけた。
ここで柊慈はあることを思いだした。
「夏帆っ、ちょっと待って」
玄関に向かおうとする夏帆を呼び止めた。
そしてリビングに行ってあるものを手にして戻って来た。
「念のために、これ試してみよう」
そう言った柊慈の手にひらの上にあったのは妊娠検査薬であった。
「え…? 私?」
いきなりのことで夏帆は戸惑う。
「元気がないのがその…妊娠の影響なら無理はできないしな」
「う、うん。わかった」
生理は遅れていたかなと考えながらも、夏帆は検査薬を受け取りお手洗いに入った。
柊慈は腕組みをして洗面台に腰を預ける。
神妙な面持ちで夏帆の検査結果を待つ。
(もし妊娠していたら…俺はパパになるのか…)
待ち望んでいたことなのに、いざそうかもしれないとなると言葉では表現できない不思議な気分になった。
そしてお手洗いから夏帆が出てきた。
柊慈は緊張の面持ちで夏帆に声をかける。
「どうだった?」
夏帆は検査キットを柊慈に見せる。
「妊娠…してない…みたい」
妊娠していれば検査キットには2本線が現れる。
しかし夏帆が見せた結果は1本線であった。
柊慈がキットを見たまま数秒間フリーズしてしまう。
夏帆はなんだか申し訳なくなる。
「期待…してた? ごめん…」
柊慈がはっと我に返った。
「違うよ。これで安心して夏帆と旅行を楽しめるな。うん、2人で思いっきり楽しんでこよう!」
「うんっ」
柊慈は残念な気持ちを懸命に隠した。
こればかりはどうしようもないことだからと。
「じゃあ、行こう」
夏帆と柊慈は手をつなぎ玄関を後にした。
職場の上司でもある迫田3佐が昼休憩をしている柊慈に訊ねた。
「ええ、家の用事で休みをいただきます」
「弔事か?」
「いえ、そうではなくて…。実は鹿児島にきてから妻の元気がなくて、ちょっとした旅行に行ってきます」
「元気がないってホームシックか?」
「たぶん。以前に比べて涙もろくて、あと昼間でも眠気が強いみたいで」
「…妊娠してないか、奥さん」
「妊娠ですか?」
「俺の奥さんもよく昼寝をしていたよ。眠くて眠くてしかたないってさ」
柊慈は腕組をして考える。
「妊娠の初期症状って”つわり”じゃないんですか?」
「人によって違うらしいぞ。市販の検査薬で調べてみたらどうだ」
「…はい」
眠気と妊娠がつながらない柊慈は小首を傾げたままだった。
明日の旅行に向けて早く帰りたかった柊慈だが職場を出たのは21時だった。
門を出てすぐの信号機が赤で家路に向かう右ウィンカーを出して止まった。
そのとき、スマホに夏帆からLINEメッセージがポップアップ表示された。
『旅行準備はOKだよ。眠たいから先に横になるね』
「……」
柊慈は前方を見つめ考える。
信号が青になった瞬間、ウインカーを逆に切り左折をした。
あるものを購入するために。
※
旅行当日の朝。
「ごめん、寝坊しちゃってっ」
夏帆が急いで着替えながら柊慈に謝る。
「俺もつい二度寝してしまった」
柊慈も急いで歯を磨く。
目的の島は鹿児島市内から運行されているフェリーに乗らねばならない。中継地の島に上陸して、さらに連絡船に乗り換えで行く。
「フェリーの時間は何時だっけ?」
「10時30分っ」
身支度を整え準備完了となり、
「じゃあ、行こう」
夏帆が柊慈に声をかけた。
ここで柊慈はあることを思いだした。
「夏帆っ、ちょっと待って」
玄関に向かおうとする夏帆を呼び止めた。
そしてリビングに行ってあるものを手にして戻って来た。
「念のために、これ試してみよう」
そう言った柊慈の手にひらの上にあったのは妊娠検査薬であった。
「え…? 私?」
いきなりのことで夏帆は戸惑う。
「元気がないのがその…妊娠の影響なら無理はできないしな」
「う、うん。わかった」
生理は遅れていたかなと考えながらも、夏帆は検査薬を受け取りお手洗いに入った。
柊慈は腕組みをして洗面台に腰を預ける。
神妙な面持ちで夏帆の検査結果を待つ。
(もし妊娠していたら…俺はパパになるのか…)
待ち望んでいたことなのに、いざそうかもしれないとなると言葉では表現できない不思議な気分になった。
そしてお手洗いから夏帆が出てきた。
柊慈は緊張の面持ちで夏帆に声をかける。
「どうだった?」
夏帆は検査キットを柊慈に見せる。
「妊娠…してない…みたい」
妊娠していれば検査キットには2本線が現れる。
しかし夏帆が見せた結果は1本線であった。
柊慈がキットを見たまま数秒間フリーズしてしまう。
夏帆はなんだか申し訳なくなる。
「期待…してた? ごめん…」
柊慈がはっと我に返った。
「違うよ。これで安心して夏帆と旅行を楽しめるな。うん、2人で思いっきり楽しんでこよう!」
「うんっ」
柊慈は残念な気持ちを懸命に隠した。
こればかりはどうしようもないことだからと。
「じゃあ、行こう」
夏帆と柊慈は手をつなぎ玄関を後にした。