【番外編】あなたが白制服に着替えたら、それが愛のはじまり
柊慈 誓いの言葉
鹿児島への異動が決まって夏帆に報告をした時、夏帆は迷わずに一緒についてくることを決めてくれた。
「当たり前だよー」と明るく切り返す夏帆の笑顔をみて、ほっとした。
同時に俺は決意した。
こんなに俺を想ってくれる妻を一生大事にしよう。
何があっても俺が守り抜くと。
この引越しを機に夏帆は幼稚園を退職する。
その準備にも追われていた夏帆。
夜は別の部屋に移って、園児1人1人にメッセージカードを作成してた。
夜な夜な隣の部屋から聞こえる夏帆が鼻をすする音。
見なくてもわかる。夏帆が泣きながらメッセージを書いているのが。
でも夏帆は悲しい、寂しいといった言葉を俺に言うことはなかった。
しかも空港では「柊慈さんを支えます」なんて嬉しいことを宣言してくれた。
でもそれが本当に心配だったんだ。
先輩方から話は聞いていた。
結婚後の転勤先での妻のホームシック。
”転勤族あるある”と言うけど夏帆は生粋の青森人だから、その反動は大きいのではないかと思った。
しかし俺がどれだけ口を酸っぱく伝えても甘えるなんてことはしないだろう。
どうしたものかと俺も悩んでいた。
そんな時、導かれるように霧島神宮に行ったんだ。
あの神宮に足を踏み入れた瞬間、その厳粛な雰囲気に飲み込まれた。
そしてここなら願い事が叶う気がした。
俺はご本尊の前に立って手を合わせた。
そして、ある人に向けて真剣にお願いをしたんだ。
夏帆のお母さんへ
柊慈です。いつも夏帆を見守ってくれて感謝しています。
今日は夏帆のことでお願いがあります。
夏帆は人に甘えるのがあまり上手ではありません。
夏帆がつらい時、我慢をしすぎている時、夢の中で『もっと柊慈を頼れ』と声をかけてあげてください。
夏帆はすぐ遠慮して俺が言っても素直に頼ることをしてくれません。
そんな夏帆のことが俺はとても心配なのです。
もちろん俺はいつだって夏帆の隣にいて守り抜くつもりです。
そこはご安心を。
長くなりましたが、最後にもう一つ。
夏帆に早く俺たちの赤ちゃんがやってきますように応援をしてください。
俺の願い事は相当長かったらしい。
「ねえ、どんなお願い事していたの?」
目を開けると夏帆がやきもちを焼いていた。
俺の願い事は全部、夏帆のことなのに。
夏帆は本当に可愛い。
自分に嫉妬しているんだから。
ホームシックで元気がなくなった時、やっぱり夏帆は俺に黙っていた。
夏帆の様子をみていれば俺はすぐに気が付いてしまうのにな。
夏帆は隠し通せていると思っているらしい。
島に一人で行きたいと言い出した時、俺はちょっとだけ夏帆を叱りたくなった。
夏帆が正直な気持ちを伝えてくれないと俺も辛いってこと夏帆は理解していないと。
でも、夏帆の生きてきた道を考えるとそれは仕方のないことかもしれない。
だから時間をかけて俺に甘えて頼ることが当たり前にしていけばいい。
そう考えた。
そして島でのあの出来事には正直、鳥肌がたったんだ。
夜中に夏帆が泣いているから心配で起こしたら夢で母親に会ったといいだした。
しかも「柊慈を頼りなさい」と言われたと。
俺が霧島神宮で夏帆の母親にお願いしたことが現実になったと俺は驚いた。
しかもだ。島から帰ったら待ち望んでいた妊娠が判明した。
一気に2つの願い事が叶ってしまったんだ。
その数日前の検査で妊娠反応が出なかったとき、正直、夏帆の前で感情を隠すのが大変だった。
俺がパパになるんだなと勝手に気持ちが盛り上がっていたから。
でもそれが現実になった。
これがどれくらい嬉しいことか言葉に尽くせない思いだった。
たぶん、産まれてくる子供は男の子だと確信した。
夏帆と俺の不思議な体験を考えると確実だと思った。
だからこそ性別は知らされたくなかった。
出産のときに、やはりあれは運命の出来事だったと感動したかったのかな。
実際に出産に立ち会って翔を見た時”運命”ってやつを感じた。
全てがそうなるように導かれているような不思議な感覚。
俺が自衛官になったこと
パイロットに選ばれたこと
青森に行くことになったこと
あの日、先輩に代わって夏帆の乗るヘリを操縦することになったこと
そして船が壊れて夏帆と同居することになったこと
振り返ってみたらすべてが夏帆と出会うための運命に導かれていたんだと思える。
俺は全ての縁に感謝したい。
こんな縁をもらえた俺は世界一、幸せ者だ。
だからこれからも、俺は夏帆と翔を愛し守っていくことを誓います。
成瀬 柊慈
―― end ――
最後までお読みいただきありがとうございました!
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