毒を盛られた令嬢は、冷酷皇帝に溺愛される

第15章 新たな役割

ある朝、カイザーがエリアナを執務室に呼んだ。
エリアナが部屋に入ると、カイザーは机の前に立っていた。
「エリアナ、座れ」
カイザーが、椅子を示す。
エリアナは、座った。
カイザーが、書類をエリアナの前に置いた。
「これは?」
エリアナが、書類を見る。
「お前に、正式な皇妃の役割を与える」
カイザーの声が、真剣だった。
「慈善事業の監督。病院の視察。孤児院の支援」
エリアナは、書類を読んだ。
様々な職務が、記されている。
「これを、私が?」
「ああ」
カイザーが、頷く。
「お前は、もう俺の妻だ。皇妃として、国のために働いてほしい」
エリアナの胸が、温かくなった。
「わかりました。精一杯、務めます」
カイザーが、微笑んだ。
「お前なら、できる」
翌日、エリアナは王都の孤児院を訪れた。
古い建物。だが、清潔に保たれている。
孤児院の院長が、エリアナを迎えた。
「皇妃陛下、ようこそいらっしゃいました」
年配の女性。優しい目。
エリアナは、微笑んだ。
「お邪魔します」
院長が、エリアナを中に案内した。
広い部屋に、子供たちが集まっている。
様々な年齢。男の子、女の子。
皆、エリアナを見ている。
エリアナは、子供たちに近づいた。
「こんにちは」
エリアナの声は、優しい。
子供たちが、恥ずかしそうに挨拶する。
「こんにちは」
エリアナは、膝をついて子供たちの目線に合わせた。
「今日は、皆に薬草のことを教えに来ました」
子供たちの目が、輝いた。
「薬草?」
一人の男の子が、尋ねる。
「はい。薬草は、怪我や病気を治すことができるのです」
エリアナは、持ってきた籠を開けた。
中には、様々な薬草。
「これは、カモミール。お腹が痛い時に効きます」
エリアナが、薬草を見せる。
子供たちが、興味深そうに見ている。
「これは、ラベンダー。怪我をした時、傷を綺麗にします」
エリアナは、一つ一つ丁寧に説明した。
子供たちは、真剣に聞いている。
「皆も、薬草を育てることができます」
エリアナが、微笑む。
「そうすれば、自分たちで薬を作れます」
一人の女の子が、手を上げた。
「私たちにも、できますか?」
「もちろんです」
エリアナが、女の子の頭を撫でる。
「皆なら、できます」
子供たちが、嬉しそうに笑った。
エリアナは、その日一日、子供たちと過ごした。
薬草の育て方を教え、簡単な薬の作り方を教えた。
子供たちは、熱心に学んだ。
「エリアナ様、優しい」
一人の男の子が、エリアナに抱きついた。
「ありがとう」
エリアナは、男の子を抱きしめた。
「どういたしまして」
他の子供たちも、次々とエリアナに駆け寄る。
「エリアナ様、また来てください」
「教えてください」
エリアナは、微笑んだ。
「もちろん。また来ます」
エリアナが孤児院を出ると、カイザーが馬車の前に立っていた。
「カイザー?」
エリアナが、驚く。
「見に来た」
カイザーが、微笑む。
「お前が、子供たちと過ごす姿を」
エリアナの頬が、赤くなる。
「見ていたのですか」
「ああ」
カイザーが、エリアナを抱き寄せた。
「お前は、生まれついての皇妃だ」
カイザーの声が、温かい。
「子供たちを幸せにする、その姿。俺は、誇りに思う」
エリアナは、カイザーに寄り添った。
「ありがとうございます」
二人は、馬車に乗り込んだ。
王宮への帰路。
エリアナは、窓の外を見つめた。
皇妃としての役割。
それは、エリアナにとって新しい使命だった。
数日後、エリアナのもとに招待状が届き始めた。
貴族令嬢たちからの、茶会への招待。
エリアナは、招待状を見た。
差出人の名前。
以前、舞踏会でエリアナを「地味」と嘲笑していた令嬢たち。
「元は追放された令嬢」と囁いていた者たち。
エリアナは、小さく笑った。
掌返し。
だが、エリアナは招待を受けた。
観察するために。
茶会は、ある貴族の邸宅で開かれた。
豪華な部屋。美しい家具。
令嬢たちが、既に集まっていた。
エリアナが入ると、皆が立ち上がった。
「皇妃陛下、ようこそいらっしゃいました」
一人の令嬢が、深く頭を下げる。
「お越しいただき、光栄です」
エリアナは、優雅に微笑んだ。
「お招きいただき、ありがとうございます」
エリアナは、席に着いた。
紅茶が注がれる。菓子が運ばれる。
令嬢たちが、次々と話しかけてくる。
「皇妃陛下、その薬は素晴らしいですわ」
一人の令嬢が、興奮した声で言う。
「肌が、本当に綺麗になりました」
「私も、髪が艶やかになりましたわ」
別の令嬢が、続ける。
エリアナは、微笑みながら応対した。
「お役に立てて、嬉しいです」
一人の令嬢が、恥ずかしそうに言った。
「皇妃陛下、昔のことは誤解でしたの」
エリアナが、その令嬢を見る。
「昔?」
「はい。私たち、皇妃陛下のことを誤解していましたわ」
令嬢の声が、媚びるような響き。
「本当は、こんなに素晴らしい方だと知っていれば」
エリアナは、表面は優雅に微笑んだ。
だが、内心では冷静に観察していた。
人は、権力に群がる。
以前は見下していた者に、今は媚びる。
それが、貴族社会の現実。
エリアナは、それを実感した。
茶会が進む中、一人の令嬢がエリアナの隣に座った。
「皇妃陛下」
静かな声。
エリアナが振り向くと、若い令嬢が微笑んでいた。
「私は、ソフィアと申します」
「ソフィア様」
エリアナが、微笑む。
ソフィアは、他の令嬢たちとは違う雰囲気だった。
媚びるような態度ではなく、誠実な目。
「皇妃陛下が、孤児院で子供たちに薬学を教えていると聞きました」
ソフィアの声が、温かい。
「素晴らしいことだと思います」
エリアナは、ソフィアを見つめた。
その目には、嘘がない。
「ありがとうございます」
エリアナが、答える。
「私も、孤児院を支援したいと思っています」
ソフィアが、真剣な顔で言う。
「もし、お手伝いできることがあれば、教えてください」
エリアナの胸が、温かくなった。
誠実な人。
ソフィアは、本当に誠実な人だった。
「ぜひ、お願いします」
エリアナが、微笑む。
二人は、孤児院支援について話し合った。
茶会が終わる頃、エリアナは一人の友人を得ていた。
ソフィア。
誠実で、優しい令嬢。
エリアナは、嬉しかった。
権力に群がる者ばかりではない。
本当に誠実な人も、いる。

その夜、王宮の一室。
イザベラが、鏡台の前で髪を梳かしていた。
その顔は、不機嫌に歪んでいる。
「なぜ、姉が」
イザベラが、呟く。
「なぜ、姉が皇妃なのよ」
鏡の中の自分を、睨む。
イザベラは、王太子妃として権力を振るっていた。
だが、エリアナほどの人気はない。
貴族たちは、エリアナを称賛する。
「皇妃陛下は素晴らしい」
「優しくて、美しい」
そんな声が、イザベラの耳に届く。
イザベラの嫉妬は、日増しに強くなっていった。
扉が開いた。
継母マルグリットが、入ってくる。
「イザベラ、何をしているの」
イザベラが、振り返った。
「お母様、何とかしてください」
イザベラの声が、焦っている。
「姉が、人気なのです。皆、姉を称賛するのです」
継母が、溜息をついた。
「落ち着きなさい」
継母が、イザベラの隣に座る。
「焦ってはいけません。機会を待つのよ」
「機会?」
「そうよ」
継母の目が、冷たく光る。
「エリアナを、再び地獄に突き落とす機会を」
イザベラの目が、輝いた。
「どうやって?」
「まだ、わからない」
継母が、立ち上がる。
「だが、必ず機会は来る。その時まで、待つのよ」
継母は、部屋を出て行った。
イザベラは、鏡を見つめた。
「姉……必ず、貴女を引きずり下ろしてやる」
イザベラの声が、低く響いた。
廊下の陰で、一人のメイドが息を殺していた。
エリアナ付きのメイド、アンナ。
アンナは、全てを聞いていた。
継母とイザベラの密談。
エリアナを陥れる陰謀。
アンナは、急いで立ち去った。
エリアナに、知らせなければ。

夜、エリアナの部屋。
エリアナは、ベッドで休んでいた。
一日の疲れが、体に残っている。
扉が開いた。
カイザーが、入ってくる。
「エリアナ」
カイザーの声が、優しい。
エリアナは、体を起こした。
「カイザー」
カイザーが、ベッドの端に座った。
「疲れただろう」
カイザーの手が、エリアナの頬に触れる。
「少し」
エリアナが、微笑む。
「だが、充実していました」
カイザーが、エリアナを引き寄せた。
エリアナの頭が、カイザーの膝に載る。
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
優しく。ゆっくりと。
「お前は、よく頑張っている」
カイザーの声が、温かい。
「俺は、誇りに思う」
エリアナは、目を閉じた。
カイザーの温もり。
優しい手。
全てが、心地よい。
「お前がいない世界など、考えられない」
カイザーが、囁く。
エリアナの目が、開いた。
カイザーを、見上げる。
「私も、です」
エリアナが、囁き返す。
「貴方がいない世界など、考えられません」
カイザーが、微笑んだ。
「ならば、ずっと一緒だ」
カイザーが、エリアナを抱き上げた。
エリアナを、膝の上に座らせる。
エリアナが、カイザーの胸に顔を埋める。
カイザーが、エリアナを抱きしめる。
強く。温かく。
「愛している、エリアナ」
カイザーの声が、耳元で響く。
「俺の全てだ」
エリアナの目から、涙が溢れた。
幸福。
こんなに幸福でいいのか。
「私も、愛しています」
エリアナが、囁く。
「貴方が、私の全てです」
カイザーが、エリアナの涙を拭った。
「泣くな」
カイザーの声が、優しい。
「お前が泣くと、俺の心が痛む」
エリアナは、微笑んだ。
「嬉しくて、泣いているだけです」
カイザーが、エリアナの額にキスをした。
そして、唇に。
優しく。深く。
エリアナは、目を閉じた。
カイザーの温もりに、包まれながら。
二人は、長い間抱き合っていた。
言葉は、必要ない。
ただ、お互いの温もりを感じながら。
窓の外には、月が輝いている。
静かな夜。
穏やかな時間。
エリアナの心は、幸福に満たされていた。
カイザーがいる。
それだけで、十分だった。
しばらくして、カイザーが囁いた。
「眠いか」
エリアナは、首を横に振った。
「いいえ。まだ、貴方と一緒にいたいです」
カイザーが、微笑んだ。
「ならば、もう少しこのままでいよう」
二人は、再び抱き合った。
時間が、ゆっくりと流れていく。
だが、二人にとって、それは永遠のように感じられた。
幸福な時間。
愛に満ちた時間。
エリアナは、カイザーの胸の中で微笑んだ。
これが、自分の人生。
もう、誰にも奪わせない。
カイザーが、エリアナの髪を撫で続ける。
優しく。愛おしそうに。
エリアナは、その手の温もりに、身を委ねた。
夜が、深くなっていく。
だが、二人の時間は、まだ続いていた。
愛し合う二人。
何も恐れることはない。
二人なら、どんな困難も乗り越えられる。
エリアナは、そう確信していた。
そして、カイザーも、同じことを感じていた。
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