毒を盛られた令嬢は、冷酷皇帝に溺愛される
第17章 暗闇の罠
翌朝、エリアナは自室の机に向かった。
証拠を確認するために。
父の毒殺に関する証拠。
マリアの証言録。医師の買収記録。黒いローブの男の情報。
全てを、机の引き出しに保管していた。
エリアナは、引き出しを開けた。
中を見る。
空だった。
エリアナの心臓が、止まった。
「ない……」
エリアナは、慌てて引き出しを探った。
だが、何もない。
文書も、証言録も、記録も。
全てが、消えている。
「誰が……」
エリアナは、部屋中を探し始めた。
机の下、本棚の裏、ベッドの下。
どこを探しても、見つからない。
エリアナは、メイドたちを呼んだ。
「誰か、私の部屋に入りましたか」
メイド長のマルタが、首を横に振った。
「いいえ、皇妃陛下。昨夜は誰も」
エリアナは、歯を食いしばった。
継母。
継母の仕業に違いない。
だが、証明できない。
証拠がない。
そして、これまで集めた証拠も、消えた。
エリアナは、部屋に一人残された。
膝から、力が抜ける。
椅子に座り込む。
「どうして……」
あんなに苦労して集めた証拠。
全てが、消えた。
扉が開いた。
カイザーが、入ってくる。
「エリアナ、何があった」
カイザーの声が、心配そうだった。
エリアナが、顔を上げる。
「証拠が、消えました」
カイザーが、エリアナに近づいた。
「証拠?」
「父の毒殺の証拠です。全て、消えました」
エリアナの声が、震える。
カイザーは、エリアナを抱きしめた。
「大丈夫だ」
カイザーの声が、優しい。
「俺が、何とかする」
エリアナは、カイザーの胸に顔を埋めた。
「でも……証拠がなければ……」
「証拠は、また集められる」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「焦るな。お前は一人じゃない」
エリアナは、頷いた。
だが、胸の奥には焦燥があった。
継母は、こんなに用意周到だったのか。
エリアナの動きを、全て見ていたのか。
恐怖が、エリアナの心を蝕み始めた。
数日後、カイザーはエリアナに告げた。
「侍女を、尋問する」
毒殺未遂の侍女。
牢に入れられている。
今日、尋問する予定だった。
エリアナとカイザーは、牢へ向かった。
地下の暗い通路。
松明の光が、壁を照らす。
看守が、二人を案内する。
「こちらです、陛下」
看守が、牢の前で止まった。
鉄格子の向こう。
暗い牢。
だが、中に人の気配がない。
カイザーが、眉をひそめた。
「侍女は、どこだ」
看守が、牢の扉を開けた。
中に入る。
そして、叫んだ。
「陛下!」
カイザーとエリアナが、牢の中へ入った。
床に、侍女が倒れていた。
動かない。
エリアナが、駆け寄った。
侍女の首に手を当てる。
脈がない。
「死んでいます」
エリアナの声が、低く響く。
カイザーが、看守を睨んだ。
「どういうことだ」
看守が、震えている。
「わかりません、陛下。今朝、見回りをした時は生きていました」
カイザーが、侍女の体を見た。
口元に、泡の跡。
「毒だ」
カイザーの声が、冷たい。
「誰かが、毒を飲ませた」
看守が、顔色を失った。
「そんな……」
カイザーが、看守を掴んだ。
「お前が、やったのか」
「違います! 私は何も!」
看守が、必死に否定する。
エリアナは、侍女の体を見つめた。
口封じ。
継母が、買収した看守を使って、侍女を殺した。
証拠隠滅。
完璧に。
エリアナの拳が、握りしめられた。
継母は、こんなに用意周到だったのか。
全ての手を、先回りして潰している。
カイザーが、看守を突き放した。
「この件を、徹底的に調査しろ」
カイザーの声が、命令口調。
「はい、陛下」
看守が、慌てて頭を下げた。
エリアナとカイザーは、牢を後にした。
通路を歩きながら、カイザーが言った。
「焦るな、エリアナ」
「はい」
エリアナは、答えた。
だが、内心では焦燥が渦巻いていた。
継母は、強い。
用意周到で、冷酷で、完璧に証拠を隠す。
エリアナは、勝てるのか。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「必ず、ボロを出す」
カイザーの声が、確信に満ちている。
「どんなに完璧に見えても、必ず隙がある」
エリアナは、頷いた。
信じるしかない。
カイザーを。
そして、自分を。
数日後、議会が招集された。
エリアナとカイザーも、出席を求められた。
議会の大広間。
高い天井。円形に配置された席。
議員たちが、既に集まっている。
エリアナとカイザーが入ると、視線が集まった。
二人は、上座に座った。
議長が、立ち上がった。
「本日の議会を、開始する」
議長の声が、広間に響く。
「まず、重大な告発がある」
エリアナの心臓が、跳ね上がった。
告発?
議長が、一通の手紙を手に取った。
「匿名の告発文が、議会に提出された」
議長が、手紙を読み上げる。
「皇妃エリアナは、先帝陛下暗殺未遂の黒幕である」
広間が、静まり返った。
エリアナの体が、固まった。
「証拠として、以下の文書が添付されている」
議長が、別の書類を取り出す。
「先帝陛下が倒れる前日、エリアナが怪しげな男と接触していた記録」
「エリアナが毒薬を購入した記録」
「エリアナが先帝陛下を恨んでいたという証言」
全て、嘘だ。
偽造された証拠。
だが、議員たちは騒然となった。
「皇妃が、反逆者だと?」
「信じられない」
「しかし、証拠があるなら」
カイザーが、立ち上がった。
「デタラメだ!」
カイザーの声が、雷のように響いた。
「これは、全て偽造された証拠だ!」
議長が、カイザーを見た。
「陛下、お気持ちはわかります。しかし、証拠がある以上、調査は必要です」
議員たちが、頷く。
「そうだ。調査すべきだ」
「真実を明らかにしなければ」
カイザーが、議員たちを睨んだ。
「エリアナは、何もしていない」
カイザーの声が、強い。
「俺が、保証する」
だが、議長は首を横に振った。
「陛下の保証では、不十分です」
議長が、エリアナを見た。
「皇妃陛下、この告発に対して、弁明していただけますか」
エリアナは、立ち上がった。
心臓が、早鐘を打っている。
だが、表情は冷静に保つ。
「この告発は、全て虚偽です」
エリアナの声が、広間に響く。
「私は、先帝陛下を恨んだことも、暗殺を企てたこともありません」
議員の一人が、立ち上がった。
「では、この証拠は何ですか」
議員が、書類を掲げる。
「ここには、貴女が毒薬を購入したとあります」
エリアナは、首を横に振った。
「それは、偽造です」
「証明できますか」
議員が、問う。
エリアナは、言葉に詰まった。
証明。
どうやって?
証拠が、ない。
エリアナが集めた証拠は、全て消えた。
そして、偽造された証拠ばかりが残っている。
「証明できないのですか」
別の議員が、立ち上がった。
「ならば、調査が必要だ」
議員たちが、次々と同意する。
「そうだ。徹底的に調査すべきだ」
「真実を明らかにしなければ」
カイザーが、拳を握りしめた。
「待て。これは、罠だ」
カイザーの声が、響く。
「誰かが、エリアナを陥れようとしている」
だが、議長は首を横に振った。
「それも含めて、調査します」
議長が、宣言する。
「調査中、皇妃陛下には謹慎していただきます」
エリアナの目が、見開かれた。
「謹慎……?」
「はい。疑いが晴れるまで、公の場への出席を控えていただきます」
議員たちが、頷く。
カイザーが、議長に詰め寄った。
「ふざけるな!」
だが、議長は動じない。
「これは、議会の決定です」
カイザーが、エリアナを見た。
その目には、怒りと無念。
エリアナは、小さく頷いた。
「わかりました。謹慎します」
エリアナの声が、静かに響く。
議会が、閉会した。
エリアナとカイザーは、王宮へ戻った。
馬車の中で、カイザーは黙っていた。
拳を、強く握りしめている。
エリアナは、窓の外を見ていた。
王都の街並み。
だが、その光景が霞んで見える。
窮地。
エリアナは、完全に追い詰められた。
証拠は消え、濡れ衣を着せられ、謹慎を命じられた。
継母の勝ちか。
エリアナは、唇を噛んだ。
まだ、諦めない。
まだ、戦える。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「大丈夫だ。必ず、真実を明らかにする」
エリアナは、カイザーを見た。
「ありがとうございます」
だが、内心では不安が渦巻いていた。
その夜、継母の屋敷。
豪華な応接間で、継母マルグリットとイザベラが座っていた。
継母は、紅茶を啜りながら微笑んでいる。
イザベラは、勝ち誇った表情。
「お母様、やりましたわ」
イザベラの声が、嬉しそうだった。
「姉が、謹慎ですって」
継母が、冷笑した。
「当然よ。あの娘を、完全に潰すつもりだもの」
継母が、紅茶を置く。
「証拠は全て消した。侍女も口封じした」
継母の目が、冷たく光る。
「そして、偽造した証拠を議会に提出した」
イザベラが、笑った。
「完璧ですわ、お母様」
「ええ」
継母が、立ち上がる。
「次は、あの娘を地獄に突き落とす」
イザベラが、目を輝かせた。
「どうやって?」
「まだ、秘密よ」
継母が、窓の外を見る。
「だが、もうすぐわかるわ」
継母の笑い声が、部屋に響いた。
冷たく、残酷な笑い声。
イザベラも、笑った。
「姉を、地獄に」
二人の笑い声が、屋敷に響く。
エリアナの運命は、闇の中へ沈もうとしていた。
その頃、王宮。
エリアナは、自室のベッドに座っていた。
窓の外を見つめている。
夜空に、星が輝いている。
だが、エリアナの心は暗かった。
窮地。
完全な窮地。
証拠もなく、濡れ衣を着せられ、謹慎を命じられた。
継母は、完璧に計画を実行した。
エリアナは、負けるのか。
扉が、ノックされた。
「入ってください」
エリアナの声が、静かに響く。
カイザーが、入ってきた。
エリアナの隣に座る。
「大丈夫か」
カイザーの声が、心配そうだった。
エリアナは、首を横に振った。
「わかりません」
エリアナの声が、震える。
「継母は、こんなに強かったのです」
カイザーが、エリアナを抱きしめた。
「お前は、もっと強い」
カイザーの声が、優しい。
「必ず、勝てる」
エリアナは、カイザーの胸に顔を埋めた。
「信じたいです」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「俺を信じろ。そして、お前自身を信じろ」
エリアナは、頷いた。
だが、胸の奥には不安が残っていた。
本当に、勝てるのか。
夜が、深くなっていく。
エリアナとカイザーは、抱き合ったまま、静かな時を過ごした。
明日、何が起こるのか。
誰にも、わからない。
だが、エリアナは戦い続ける。
諦めない。
必ず、真実を明らかにする。
そう、誓った。
証拠を確認するために。
父の毒殺に関する証拠。
マリアの証言録。医師の買収記録。黒いローブの男の情報。
全てを、机の引き出しに保管していた。
エリアナは、引き出しを開けた。
中を見る。
空だった。
エリアナの心臓が、止まった。
「ない……」
エリアナは、慌てて引き出しを探った。
だが、何もない。
文書も、証言録も、記録も。
全てが、消えている。
「誰が……」
エリアナは、部屋中を探し始めた。
机の下、本棚の裏、ベッドの下。
どこを探しても、見つからない。
エリアナは、メイドたちを呼んだ。
「誰か、私の部屋に入りましたか」
メイド長のマルタが、首を横に振った。
「いいえ、皇妃陛下。昨夜は誰も」
エリアナは、歯を食いしばった。
継母。
継母の仕業に違いない。
だが、証明できない。
証拠がない。
そして、これまで集めた証拠も、消えた。
エリアナは、部屋に一人残された。
膝から、力が抜ける。
椅子に座り込む。
「どうして……」
あんなに苦労して集めた証拠。
全てが、消えた。
扉が開いた。
カイザーが、入ってくる。
「エリアナ、何があった」
カイザーの声が、心配そうだった。
エリアナが、顔を上げる。
「証拠が、消えました」
カイザーが、エリアナに近づいた。
「証拠?」
「父の毒殺の証拠です。全て、消えました」
エリアナの声が、震える。
カイザーは、エリアナを抱きしめた。
「大丈夫だ」
カイザーの声が、優しい。
「俺が、何とかする」
エリアナは、カイザーの胸に顔を埋めた。
「でも……証拠がなければ……」
「証拠は、また集められる」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「焦るな。お前は一人じゃない」
エリアナは、頷いた。
だが、胸の奥には焦燥があった。
継母は、こんなに用意周到だったのか。
エリアナの動きを、全て見ていたのか。
恐怖が、エリアナの心を蝕み始めた。
数日後、カイザーはエリアナに告げた。
「侍女を、尋問する」
毒殺未遂の侍女。
牢に入れられている。
今日、尋問する予定だった。
エリアナとカイザーは、牢へ向かった。
地下の暗い通路。
松明の光が、壁を照らす。
看守が、二人を案内する。
「こちらです、陛下」
看守が、牢の前で止まった。
鉄格子の向こう。
暗い牢。
だが、中に人の気配がない。
カイザーが、眉をひそめた。
「侍女は、どこだ」
看守が、牢の扉を開けた。
中に入る。
そして、叫んだ。
「陛下!」
カイザーとエリアナが、牢の中へ入った。
床に、侍女が倒れていた。
動かない。
エリアナが、駆け寄った。
侍女の首に手を当てる。
脈がない。
「死んでいます」
エリアナの声が、低く響く。
カイザーが、看守を睨んだ。
「どういうことだ」
看守が、震えている。
「わかりません、陛下。今朝、見回りをした時は生きていました」
カイザーが、侍女の体を見た。
口元に、泡の跡。
「毒だ」
カイザーの声が、冷たい。
「誰かが、毒を飲ませた」
看守が、顔色を失った。
「そんな……」
カイザーが、看守を掴んだ。
「お前が、やったのか」
「違います! 私は何も!」
看守が、必死に否定する。
エリアナは、侍女の体を見つめた。
口封じ。
継母が、買収した看守を使って、侍女を殺した。
証拠隠滅。
完璧に。
エリアナの拳が、握りしめられた。
継母は、こんなに用意周到だったのか。
全ての手を、先回りして潰している。
カイザーが、看守を突き放した。
「この件を、徹底的に調査しろ」
カイザーの声が、命令口調。
「はい、陛下」
看守が、慌てて頭を下げた。
エリアナとカイザーは、牢を後にした。
通路を歩きながら、カイザーが言った。
「焦るな、エリアナ」
「はい」
エリアナは、答えた。
だが、内心では焦燥が渦巻いていた。
継母は、強い。
用意周到で、冷酷で、完璧に証拠を隠す。
エリアナは、勝てるのか。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「必ず、ボロを出す」
カイザーの声が、確信に満ちている。
「どんなに完璧に見えても、必ず隙がある」
エリアナは、頷いた。
信じるしかない。
カイザーを。
そして、自分を。
数日後、議会が招集された。
エリアナとカイザーも、出席を求められた。
議会の大広間。
高い天井。円形に配置された席。
議員たちが、既に集まっている。
エリアナとカイザーが入ると、視線が集まった。
二人は、上座に座った。
議長が、立ち上がった。
「本日の議会を、開始する」
議長の声が、広間に響く。
「まず、重大な告発がある」
エリアナの心臓が、跳ね上がった。
告発?
議長が、一通の手紙を手に取った。
「匿名の告発文が、議会に提出された」
議長が、手紙を読み上げる。
「皇妃エリアナは、先帝陛下暗殺未遂の黒幕である」
広間が、静まり返った。
エリアナの体が、固まった。
「証拠として、以下の文書が添付されている」
議長が、別の書類を取り出す。
「先帝陛下が倒れる前日、エリアナが怪しげな男と接触していた記録」
「エリアナが毒薬を購入した記録」
「エリアナが先帝陛下を恨んでいたという証言」
全て、嘘だ。
偽造された証拠。
だが、議員たちは騒然となった。
「皇妃が、反逆者だと?」
「信じられない」
「しかし、証拠があるなら」
カイザーが、立ち上がった。
「デタラメだ!」
カイザーの声が、雷のように響いた。
「これは、全て偽造された証拠だ!」
議長が、カイザーを見た。
「陛下、お気持ちはわかります。しかし、証拠がある以上、調査は必要です」
議員たちが、頷く。
「そうだ。調査すべきだ」
「真実を明らかにしなければ」
カイザーが、議員たちを睨んだ。
「エリアナは、何もしていない」
カイザーの声が、強い。
「俺が、保証する」
だが、議長は首を横に振った。
「陛下の保証では、不十分です」
議長が、エリアナを見た。
「皇妃陛下、この告発に対して、弁明していただけますか」
エリアナは、立ち上がった。
心臓が、早鐘を打っている。
だが、表情は冷静に保つ。
「この告発は、全て虚偽です」
エリアナの声が、広間に響く。
「私は、先帝陛下を恨んだことも、暗殺を企てたこともありません」
議員の一人が、立ち上がった。
「では、この証拠は何ですか」
議員が、書類を掲げる。
「ここには、貴女が毒薬を購入したとあります」
エリアナは、首を横に振った。
「それは、偽造です」
「証明できますか」
議員が、問う。
エリアナは、言葉に詰まった。
証明。
どうやって?
証拠が、ない。
エリアナが集めた証拠は、全て消えた。
そして、偽造された証拠ばかりが残っている。
「証明できないのですか」
別の議員が、立ち上がった。
「ならば、調査が必要だ」
議員たちが、次々と同意する。
「そうだ。徹底的に調査すべきだ」
「真実を明らかにしなければ」
カイザーが、拳を握りしめた。
「待て。これは、罠だ」
カイザーの声が、響く。
「誰かが、エリアナを陥れようとしている」
だが、議長は首を横に振った。
「それも含めて、調査します」
議長が、宣言する。
「調査中、皇妃陛下には謹慎していただきます」
エリアナの目が、見開かれた。
「謹慎……?」
「はい。疑いが晴れるまで、公の場への出席を控えていただきます」
議員たちが、頷く。
カイザーが、議長に詰め寄った。
「ふざけるな!」
だが、議長は動じない。
「これは、議会の決定です」
カイザーが、エリアナを見た。
その目には、怒りと無念。
エリアナは、小さく頷いた。
「わかりました。謹慎します」
エリアナの声が、静かに響く。
議会が、閉会した。
エリアナとカイザーは、王宮へ戻った。
馬車の中で、カイザーは黙っていた。
拳を、強く握りしめている。
エリアナは、窓の外を見ていた。
王都の街並み。
だが、その光景が霞んで見える。
窮地。
エリアナは、完全に追い詰められた。
証拠は消え、濡れ衣を着せられ、謹慎を命じられた。
継母の勝ちか。
エリアナは、唇を噛んだ。
まだ、諦めない。
まだ、戦える。
カイザーが、エリアナの手を握った。
「大丈夫だ。必ず、真実を明らかにする」
エリアナは、カイザーを見た。
「ありがとうございます」
だが、内心では不安が渦巻いていた。
その夜、継母の屋敷。
豪華な応接間で、継母マルグリットとイザベラが座っていた。
継母は、紅茶を啜りながら微笑んでいる。
イザベラは、勝ち誇った表情。
「お母様、やりましたわ」
イザベラの声が、嬉しそうだった。
「姉が、謹慎ですって」
継母が、冷笑した。
「当然よ。あの娘を、完全に潰すつもりだもの」
継母が、紅茶を置く。
「証拠は全て消した。侍女も口封じした」
継母の目が、冷たく光る。
「そして、偽造した証拠を議会に提出した」
イザベラが、笑った。
「完璧ですわ、お母様」
「ええ」
継母が、立ち上がる。
「次は、あの娘を地獄に突き落とす」
イザベラが、目を輝かせた。
「どうやって?」
「まだ、秘密よ」
継母が、窓の外を見る。
「だが、もうすぐわかるわ」
継母の笑い声が、部屋に響いた。
冷たく、残酷な笑い声。
イザベラも、笑った。
「姉を、地獄に」
二人の笑い声が、屋敷に響く。
エリアナの運命は、闇の中へ沈もうとしていた。
その頃、王宮。
エリアナは、自室のベッドに座っていた。
窓の外を見つめている。
夜空に、星が輝いている。
だが、エリアナの心は暗かった。
窮地。
完全な窮地。
証拠もなく、濡れ衣を着せられ、謹慎を命じられた。
継母は、完璧に計画を実行した。
エリアナは、負けるのか。
扉が、ノックされた。
「入ってください」
エリアナの声が、静かに響く。
カイザーが、入ってきた。
エリアナの隣に座る。
「大丈夫か」
カイザーの声が、心配そうだった。
エリアナは、首を横に振った。
「わかりません」
エリアナの声が、震える。
「継母は、こんなに強かったのです」
カイザーが、エリアナを抱きしめた。
「お前は、もっと強い」
カイザーの声が、優しい。
「必ず、勝てる」
エリアナは、カイザーの胸に顔を埋めた。
「信じたいです」
カイザーが、エリアナの髪を撫でる。
「俺を信じろ。そして、お前自身を信じろ」
エリアナは、頷いた。
だが、胸の奥には不安が残っていた。
本当に、勝てるのか。
夜が、深くなっていく。
エリアナとカイザーは、抱き合ったまま、静かな時を過ごした。
明日、何が起こるのか。
誰にも、わからない。
だが、エリアナは戦い続ける。
諦めない。
必ず、真実を明らかにする。
そう、誓った。