塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました

幼馴染との再会

「久しぶりだな、ラシェル」

「……セヴラン様」

「なんかいつもと雰囲気が違うな。お高くとまって……、おまえにそんな服、似合わないだろ」

 セヴランは、ラシェルの格好を頭の先から足の先までじろじろと見ると、馬鹿にするように鼻で笑った。うしろでコレットが怒りのあまり息をのんだのが分かったが、ラシェルが何も言わないので黙って堪えているようだ。

「まぁ、今のおまえは侯爵夫人だもんな。どうせ、『侯爵家にふさわしい格好を』とでも言われてるんだろうけど」

 その言葉に、ラシェルの胸が小さく疼く。確かにレナルドにはそう言われて、何着ものドレスを仕立ててもらった。今着ているドレスだって、そのうちの一着だ。セヴランが言うように、やはり貧乏男爵家出身のラシェルには、こんな格好は不相応なのかもしれない。

 黙ったままのラシェルを見て、セヴランはにやりと口の端を上げた。

「身分違いの結婚なんて、苦労するだけだもんな、だからやめておけばよかったのに」

「苦労はしていません。レナルド様は、よくしてくださってますから」

 思わず反論すると、セヴランの表情が苛立たしげに変わった。

「そりゃ、借金を肩代わりしてもらったんだから、文句は言えないよな。でも、おまえが選ばれたのだって派閥に影響がないからって理由だろう。侯爵家がわざわざブラン男爵家みたいな貧乏貴族に声をかけるなんて、それくらいしか考えられない」

 吐き捨てるようにそう言ったセヴランの言葉は、真実を言い当てている。恐らく、レナルドとラシェルの結婚を耳にした貴族のほとんどがそう思っているだろう。レナルドは対外的に『(ラシェル)を愛している』とアピールしていたようだが、それがどこまで広まっているかは分からない。
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