塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました

ラシェルの決意と家族との再会

 レナルドは、夕食の席にも姿をあらわさなかった。

 執事のクレマンに確認したところ、たまった執務を片付けるため部屋にこもっているという。

 それが嘘であることは分かっているが、ラシェルは何も言わずにうなずいた。

 夜も寝室で待っていたが、レナルドは来なかった。

 数時間前に激しく抱かれたベッドは、もう綺麗に整えられている。それだけ見れば、何もなかったかのようだ。

「今夜は、来られないかもしれないわね」

 ぽつりとつぶやいて、ラシェルはベッドに横になった。ここ数日は毎晩レナルドに抱きしめられて眠っていたから、ぬくもりが恋しくなってしまう。

 レナルドに愛される偽りの日々にどっぷりと浸かりすぎていたのだなと、ラシェルは苦い笑みを浮かべた。

「……もう、二度とそんなこと求めちゃいけないって分かってるのにね」

 毛布に包まって、ラシェルはため息をつく。

 レナルドに本当のことを話さなければならない。きっとここで過ごすのもあとわずかだ。

 涙がこみ上げてくるのを感じて、ラシェルはぎゅっと強く目を閉じた。


 翌朝、ラシェルが朝食をとっているとレナルドがやってきた。憔悴した様子で、目の下には隈ができている。

「レナルド様、顔色が悪いです……。大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。俺のことはどうだっていいんだ。ラシェル、俺はきみに酷いことを……」

 深々と頭を下げられて、ラシェルは慌てて椅子から立ち上がった。

「あの、えっと……気にしてないので。私も、偶然知人と会ったからって男の人と話すのは軽率だったと思いますし、その……人前だからと拒んだことも」

「いや、ラシェルは悪くない。俺が全部悪いんだ」

 顔を上げたレナルドは、ラシェルの服装を見て顔を歪めた。
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