塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました

救出

「ラシェル……!」

 ベッドに両腕を拘束されたラシェルと、その上に覆いかぶさるセヴランという状況を見て、レナルドの顔が一気に怒りに染まる。そして、右腕を振りかぶりながらこちらに向かって駆けてきた。

 一瞬の空白ののち、ゴッという鈍い音と共にセヴランの身体が吹っ飛ぶ。壁に背中を勢いよく打ちつけたセヴランは、低く呻いてそのまま床に崩れ落ちた。

 冷たい目でセヴランを一瞥したあと、レナルドはラシェルの方に向き直る。すぐさま彼は、ラシェルの腕を縛っていた縄をほどいてくれた。険しかったその顔を泣き出しそうに歪めながら、彼はマントを脱ぐとラシェルの身体を包み込む。

「ラシェル……もう大丈夫だ。大丈夫だから」

「レナルド様……」

 震える声で名前を呼ぶと、レナルドが強く抱きしめてくれる。そのぬくもりにようやく助かったことを実感して、ラシェルは彼の背中に手を回した。

 全身が小刻みに震えているし、目からはぼろぼろと涙がこぼれ落ちて止まらない。そんなラシェルをしっかりと抱きしめるレナルドの腕も、同じように震えているような気がした。

 その時、呻きながらセヴランがよろよろと身体を起こした。その瞬間レナルドの顔色が変わり、ひりつくような緊張感を纏う。ラシェルを背後に庇うと、彼はセヴランに視線を向けた。

 よろめきながら上体を起こしたセヴランだったが、痛みでまともに動けないのか、立ち上がることはできずにいる。顔を腫らし口元から血を流しているが、それでも忌々しげにレナルドをにらみつけた。

「おまえ……どうして、ここに」 
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