塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました

お互いの気持ち

 屋敷に戻ったラシェルは、まっすぐにレナルドの部屋に連れていかれた。腰に巻きつけられた腕は馬車に乗った時から一度も離れていないし、身体はしっかりと彼のマントに包まれている。

 レナルドはラシェルをソファに座らせると、目の前に膝をつく。そして、ラシェルをじっと見上げた。

「……恐ろしい目に遭わせて、本当にすまなかった」

「大丈夫です。レナルド様が来てくださいましたから」

「あいつには何をされた? どこに触られた?」

「首のあたりを少し触られただけです」

 ラシェルの首元に視線を向けたレナルドは、ボタンの引きちぎられたドレスを見て顔を歪めた。

「だけ、じゃない……。もっと殴っておけばよかった」

 吐き捨てるように言ったあと、レナルドはラシェルをそっと抱き寄せた。

「コレットを呼ぶから、着替えておいで。その服は、燃やしてしまおう。あいつが触れた服なんて、もう二度とラシェルに着せるつもりはないからな」

 ラシェルに向ける言葉は優しいのに、セヴランを思い出した瞬間、レナルドの声は低くなる。

 嫉妬や独占欲を感じさせるその言葉は、本当に彼の本心なのだろうか。馬車の中で聞いた、彼の記憶が戻っていることについても、ラシェルが驚きのあまり言葉が出なくなってしまったせいで、まだちゃんと話せていないのだ。

「すぐに着替えてきますね」

 それだけ伝えて、ラシェルは一旦自室に戻った。


 着替えてレナルドの部屋に戻ると、彼は自分の隣に座るよう促した。ソファに腰を下ろした瞬間、彼の腕が腰に回され、抱き寄せられる。

「あの、レナルド様」

「うん?」

「えっと、あの……記憶が戻っているというのは……本当ですか?」

 おずおずと問いかけたラシェルに、レナルドは柔らかな笑みを見せた。
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