塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました

記憶喪失の旦那様

 ラシェルがレナルドの妻となって、一か月が過ぎた。相変わらず彼との関係はよそよそしいままで、会話もほとんどない。

 もちろん、初夜以来抱かれたこともない。どうやら子種は実を結ばなかったようで、先週には月のものが来た。

 となれば問題となるのは、再び行為をするか否かということ。ラシェルは最近、どうすればいいのかと頭を悩ませている。

 いずれは侯爵家の跡継ぎを産まねばならないというのは分かっているのだが、もう一度レナルドに抱いてもらうのは申し訳ない気がするのだ。

 初めてだったラシェルはともかく、男性にとって性行為は気持ちのいいものだと聞いていたのだが、初夜の際のレナルドはどう見ても快楽なんて感じていなさそうだった。そんな行為を跡継ぎが生まれるまで繰り返すというのは、彼にとって苦痛なのではないだろうか。

「私も、好きな人に抱かれるなら幸せだと思っていたけど、そうでもなかったものね……」

 ため息をついて、ラシェルは立ち上がった。気は進まないが、時機を見てレナルドにも相談すべきだろう。やはり行為に抵抗があると言われたら、養子を迎える提案をしてもいいかもしれない。さすがに愛人を迎えるのは嫌だが。

 レナルドが別の女性を抱くところを想像してしまい、ラシェルは慌てて首を振った。

「形だけの妻のくせに、レナルド様を私だけのものにしたいなんて、案外欲深かったのね、私……」

 苦笑まじりにつぶやくと、書庫の鍵を持ってラシェルは部屋を出た。

 いつものようにお気に入りのソファに座り、本を開く。今日手に取ったのは子供向けの童話だが、懐かしくて読み始めると止まらない。夢中になってページをめくっていると、部屋の外からバタバタと大きな足音が近づいてくるのが聞こえた。
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