塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました

令嬢たちのお見舞い

 庭でのお茶会で甘い時間を過ごしたせいか、レナルドは更に頻繁な愛情表現を見せるようになった。

 どこにいても常にラシェルを抱き寄せて、頻繁に髪を撫でたり頬やこめかみにキスをくれる。

 お互いの舌を絡めあうような濃厚な口づけも、あれから何度もしている。

 レナルドが記憶を失って三日が経つが、彼はまだラシェルとの関係を思い出していないようだ。

 そのことにどこかホッとする気持ちと、そう考えてしまう自分に罪悪感を抱きながら、ラシェルはレナルドに愛される偽りの日々にどっぷりと浸かっている。

 夜も、レナルドはラシェルをしっかりと腕の中に抱きしめて眠る。

 だけど、行為だけはまだしていない。キス以上の触れあいになるとラシェルが身体をこわばらせることに、レナルドは気づいているのだろう。だから彼は、それ以上を求めてこようとはしない。

 彼の身体が昂っていることは抱きあっていれば分かるし、ラシェルだってこのまま受け入れてしまいたいと思うこともある。

 だけど今のレナルドに抱かれてしまったら、ラシェルはもう後戻りできないような気がするのだ。記憶を取り戻した彼がラシェルを再び遠ざけるようになった時に、きっと耐えられない。

 散々甘いキスを繰り返しておきながらも、ラシェルはレナルドと一線を越えることだけはできないと、矛盾したことを考えていた。


 今朝もレナルドの腕の中で目覚めたラシェルは、一度自室に戻って着替えてから食堂へと向かった。

 ふと玄関ホールの方から複数の人の声がすることに気づいて、ラシェルは思わず足を止める。

 こんなに朝早くから、来客だろうか。

 不思議に思いつつ少し離れた柱の影から様子をうかがうと、華やかなドレスに身を包んだ数人の令嬢が執事のクレマンを取り囲んでいるのが見えた。
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