塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
過去のこと
何度思い返しても、間違いない。あのハンカチは五年前、ラシェルがレナルドの手に結んだものだ。
その時のことを、ラシェルは思い返す。
ブラン男爵家は裕福ではなかったが、それでも貴族の末端に籍を置く身として、慈善活動にも力を入れていた。
幼い頃から両親と共に孤児院や養老院へ訪問していたし、大きくなってからは一人で訪問することもよくあった。
王都のはずれにある孤児院には、特にラシェルが頻繁に訪問していた。領地から一番近い場所にあったこともあるし、何より子供たちがラシェルに懐いてくれていたのだ。幼い子供に「また会いに来てね」と言われれば、それを無視することなんてできなかった。
当時ラシェルは十五歳で、一人で孤児院へ訪問することが増えてきた頃だった。
近々行われる予定のバザーの準備を手伝うため、ラシェルは時間を見つけては通っていた。
子供たちとバザーに出すためのクッキーを作り、焼き上がりを待つ間は庭で遊んできてもいいと声をかけると、子供たちは歓声をあげた。
「追いかけっこしよう!」
「ボールで遊びたい!」
「ラシェルさまも遊ぼう!」
子供たちに手を引かれて庭に出ると、背後で大きなため息が聞こえた。
「なぁ、まだ帰らないの?」
うんざりといった様子のその声の主は、隣の領地の伯爵令息、セヴランだ。ラシェルが出かけようとしたところで出会ったのだが、何故か孤児院までついてきたのだ。
「退屈でしたら、セヴラン様はどうぞ先にお帰りください。私はこのあと、クッキーの袋詰め作業もあるんです」
「はぁ? ついてきてやったのに、先に帰れって言うのか? 待っててやるから、さっさと終わらせろよ」
その時のことを、ラシェルは思い返す。
ブラン男爵家は裕福ではなかったが、それでも貴族の末端に籍を置く身として、慈善活動にも力を入れていた。
幼い頃から両親と共に孤児院や養老院へ訪問していたし、大きくなってからは一人で訪問することもよくあった。
王都のはずれにある孤児院には、特にラシェルが頻繁に訪問していた。領地から一番近い場所にあったこともあるし、何より子供たちがラシェルに懐いてくれていたのだ。幼い子供に「また会いに来てね」と言われれば、それを無視することなんてできなかった。
当時ラシェルは十五歳で、一人で孤児院へ訪問することが増えてきた頃だった。
近々行われる予定のバザーの準備を手伝うため、ラシェルは時間を見つけては通っていた。
子供たちとバザーに出すためのクッキーを作り、焼き上がりを待つ間は庭で遊んできてもいいと声をかけると、子供たちは歓声をあげた。
「追いかけっこしよう!」
「ボールで遊びたい!」
「ラシェルさまも遊ぼう!」
子供たちに手を引かれて庭に出ると、背後で大きなため息が聞こえた。
「なぁ、まだ帰らないの?」
うんざりといった様子のその声の主は、隣の領地の伯爵令息、セヴランだ。ラシェルが出かけようとしたところで出会ったのだが、何故か孤児院までついてきたのだ。
「退屈でしたら、セヴラン様はどうぞ先にお帰りください。私はこのあと、クッキーの袋詰め作業もあるんです」
「はぁ? ついてきてやったのに、先に帰れって言うのか? 待っててやるから、さっさと終わらせろよ」