元恋人と、今日から同僚です

第3話 噂は、静かに広がっていく

 一週間が経った。
 朝倉が編集部に来てから七日。私はまだ、彼を避け続けている。

 でも、限界が近いことは感じていた。
 教育係という立場上、最低限の会話はしなければならない。
 原稿のチェック方法、入稿のスケジュール、外部スタッフとのやり取り。
 教えることは山ほどあった。

 そのたびに朝倉と顔を合わせ、声を聞き、昔の記憶が蘇る。
 心が、じわじわと消耗していっている。

「結城さん、この写真のセレクト、見てもらえますか」

 朝倉が私のデスクに来る。もう何度目だろうか。
 彼の手には、次号の特集用の写真データが入ったタブレット。

「……どれ」
「この三枚で迷ってます。誌面の雰囲気に合うのは、どれでしょう」

 画面を覗き込み確認する。
 モデルのポートレート写真。光の当たり方が微妙に違う三枚。
 
 朝倉との距離が近すぎる。肩が触れそうな位置に立っている。
 心臓がうるさい。

「……二枚目かな」
「理由を聞いてもいいですか」
「光が柔らかい。この特集のトーンに合ってると思う」

 短く答えて、視線を逸らす。

「なるほど。ありがとうございます」

 朝倉が戻っていく。
 また息を止めていたことに気づいて、深く吸い込んだ。

 いつまで、こんなことが続くんだろう……
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