元恋人と、今日から同僚です
第4話 終わったことは、終わったままでいい
金曜日の夜。
週末が目前に迫っている。
朝倉から「話したい」と言われてから、二日が経った。
私はまだ、返事をしていない。「考えとく」と言ったきり、避け続けている。
仕事は淡々とこなした。
教育係として必要な会話だけ交わし、それ以外は距離を取る。
朝倉も、あれ以上踏み込んでこなかった。
表面上は、平穏。
でも、心の中はぐちゃぐちゃだった。
定時を過ぎて、編集部の人が一人、また一人と帰っていく。
金曜の夜だ。みんな予定があるのだろう。
飲み会とか、デートとか、友人との食事とか。
私には、何もない。
家に帰って、一人で過ごすだけ。
「真帆さん、今日こそ飲みに行きません?」
宮本が声をかけてきた。
「……今日は、ちょっと」
「えー、また断るんですか。もう三回連続ですよ」
そうだった。宮本の誘いを、ずっと断り続けている。
一人になりたかった。誰かといると、余計なことを考えてしまう。
「ごめん。来週は絶対行くから」
「約束ですよ。破ったら怒りますからね」
宮本が少し膨れた顔をして、帰っていく。
申し訳ないとは思う。
でも、今は無理だった……
編集部に残っているのは、私と数人。
朝倉の姿は見えない。先に帰ったのだろう。
少しだけ、ほっとする。今日は顔を合わせずに済みそうだ。
パソコンに向かいながら、ぼんやりと考える。
五年前のこと。別れた日のこと。
◇
あの日、私たちは朝倉の部屋にいた。
社会人二年目の冬。付き合って三年が経とうとしていた頃。
きっかけは、些細な言い合いだった。
私が終電を逃して、タクシーで帰ったことを朝倉が咎めた。
身体を壊すと言った。もっと自分を大事にしろと。
私は反論した。仕事が大事なんだと。今が頑張り時なんだと。
「俺より仕事が大事なのか」
朝倉がそう言った。
週末が目前に迫っている。
朝倉から「話したい」と言われてから、二日が経った。
私はまだ、返事をしていない。「考えとく」と言ったきり、避け続けている。
仕事は淡々とこなした。
教育係として必要な会話だけ交わし、それ以外は距離を取る。
朝倉も、あれ以上踏み込んでこなかった。
表面上は、平穏。
でも、心の中はぐちゃぐちゃだった。
定時を過ぎて、編集部の人が一人、また一人と帰っていく。
金曜の夜だ。みんな予定があるのだろう。
飲み会とか、デートとか、友人との食事とか。
私には、何もない。
家に帰って、一人で過ごすだけ。
「真帆さん、今日こそ飲みに行きません?」
宮本が声をかけてきた。
「……今日は、ちょっと」
「えー、また断るんですか。もう三回連続ですよ」
そうだった。宮本の誘いを、ずっと断り続けている。
一人になりたかった。誰かといると、余計なことを考えてしまう。
「ごめん。来週は絶対行くから」
「約束ですよ。破ったら怒りますからね」
宮本が少し膨れた顔をして、帰っていく。
申し訳ないとは思う。
でも、今は無理だった……
編集部に残っているのは、私と数人。
朝倉の姿は見えない。先に帰ったのだろう。
少しだけ、ほっとする。今日は顔を合わせずに済みそうだ。
パソコンに向かいながら、ぼんやりと考える。
五年前のこと。別れた日のこと。
◇
あの日、私たちは朝倉の部屋にいた。
社会人二年目の冬。付き合って三年が経とうとしていた頃。
きっかけは、些細な言い合いだった。
私が終電を逃して、タクシーで帰ったことを朝倉が咎めた。
身体を壊すと言った。もっと自分を大事にしろと。
私は反論した。仕事が大事なんだと。今が頑張り時なんだと。
「俺より仕事が大事なのか」
朝倉がそう言った。