元恋人と、今日から同僚です

第5話 答えは、もう決まっている

 週が明け、月曜日の朝。
 私は重い足取りで出社した。

 金曜の夜のことが、頭から離れない。
 エレベーターホールでの会話。朝倉の真剣な目。「俺は待ってる」という言葉。
 土日の間、ずっとそればかり考えていた。

 結論は出なかった。
 いや、出ていたのかもしれない。ただ、それを認めたくなかっただけで。

 編集部に入ると、朝倉はもう席についていた。
 目が合い、朝倉が軽く会釈する。私も、形だけ頭を下げた。
 それだけ。いつも通りの、素っ気ないやり取り。

 だけど、やっぱり違う。
 金曜の夜を経て、何かが変わってしまった気がする。



 午前中は、淡々と仕事をこなした。
 朝倉との会話は、必要最低限の業務連絡だけ。
 朝倉も、それ以上踏み込んでこなかった。

 昼休み、宮本が声をかけてきた。

「真帆さん、顔色悪いですよ」
「……寝不足」
「また悩んでるんですか。朝倉さんのこと」

 図星すぎて、返す言葉がない。

「……まあね」
「進展あったんですか?」

 進展。そう言えるのかどうか。

「……金曜の夜、少し話した。ちゃんと話し合いたいって言われた。また」
「で、どうしたんですか」
「断った。というか、うやむやにした」

 宮本が小さくため息をつく。

「真帆さん、いつまで逃げるつもりですか」
「逃げてるわけじゃ??」
「誰が見てもわかりますよ」

 はっきり言われて、黙る。
 宮本は後輩だけど、こういう時は遠慮しない。
 それは、ありがたいんだけど、容赦なく踏み込んでくる。

「話し合うのが怖いんでしょうけど。
 でも、このままじゃ何も変わらないですよ?」

「変わらなくていいの。変える必要がない」
「本当に?」

 宮本がじっと私を見る。

「本当にそう思ってるなら、そんな顔しないと思いますけど」

 返事ができなかった。
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